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2011年9月23日金曜日

食と幸せ

 2011年9月23日、今日は應典院の本寺、大蓮寺でのお彼岸の法務に就かねばならなかったが、應典院で開催の神戸女学院大学の「アートマネジメント演習」の受講生たちが「Design Your Life〜今、食から健幸に気づくとき」とを往復させていただくという、慌ただしい日となった。これは2006年10月29日に寺子屋トーク第46回「死者とのコミュニケーションは可能か?」に釈徹宗先生と共に内田樹先生をお招きした縁によるところである。要は應典院に初めてお越しになった内田先生から、「副専攻で立ち上げるキャリアデザインプログラムアートマネジメントコースの実習の一貫として、現場の協力を」と、お声掛けをいただいたのだ。そうして、2009年度より、私が非常勤講師の立場に就かせていただき、学生たちの学びの場を應典院で提供させていただくこととなった。
 アートマネジメントコースの学生たちの應典院での活動も、年を経ることに深化を重ねてきた。2009年は演劇際のお手伝いに留まるところであったが、2010年は7月の第1週の木曜日に、「小さな夢から大きな夢へ」と題し、日本キリスト教団稲田教会の花咲一利牧師をお招きして、トークとクリスマスカードづくりのワークショップを行った。そして今年は上述のとおりに、「食」を手がかりにしたトークとワークショップが行われた。なぜ、アートマネジメントなのに「食」なのか、それは2年ほどのアートマネジメントコースでの学びの集大成として、自らが場を企画し担うにあたって、「アートとは必ずしも芸術と同値(イコール)ではない」ということを手がかりに、「日常にある「当たり前」を見つめなおす」ことが大切ではないか、と設定したためである。
 この「アートマネジメント演習」は、今年度から應典院寺町倶楽部の築港ARCプロジェクトのチーフディレクターを務めた朝田亘くんを共同担当者に迎えることができた。朝田くんの関心とネットワークも重なり、どんな「当たり前」を扱うかというとき、口に入れるもの、すなわち、生産、流通、市場、消費といった過程を見つめ直すこととした。受講生たちは自らを「KC☆ART」を名付け、企画、広報、当日運営の3つのチームに分かれた。そして、農家の米田量さん、夙川にあるアルテシンポジオというレストランの荻堂紀里さん、たすきがけ事業所という団体名を掲げて新規就農アドバイザーとして活動する宮内博子さん、そしてフェアトレード&エコロジーショップINE谷町九丁目店の原いね子さんを事前のビデオインタビューから、「食」にまつわる「当たり前」を問う場が生み出された。
 あまり人を褒めないと一部で思われている私だが、今回の催しでは、本当によい「チームワーク」がなされていたことに敬意を表すとともに、感謝の思いもここに記させていただきたい。前掲したゲストの皆さんからは、私の視点でキーフレーズ風にまとめると、それぞれに「自律と主体性の回復を」(米田さん)、「消費者の希望に応えて成立する職人の信念と技術」(荻堂さん)、「お互いさまとおかげさまの適合を原動力に」(宮内さん)、「可能性を与えるために仕事に見合う対価を払って」(原さん)など、アートマネジメントとキャリアディベロップメントを絶妙に重ねたトークが繰り広げられたのは、事前の調整と、フェアトレード品のクッキーや紅茶による雰囲気づくりが功を奏したのだろう。そして、ゲストも参加して作成した画用紙と文具を自由に用いた「日常生活」を表現する作品づくりでは、参加者全員が非言語と言語の双方から、生きることの意味を追究する、意義深い空間となっていた。昨年、場の担い手となっていた先輩らも3人が訪れる中で学生たちのことばで整理された「アートとは」の3点、(1)人生のように、どの作品も正解であるもの、(2)人と比べるものではなく、共有するもの、(3)制限のない自由な世界に創造出来るもの、これらを今後のキャリアにおいてそれぞれに想い起こし、よい生を生き抜いて欲しい、そう願っている。


ちなみにお彼岸の法要と、神戸女学院大学の企画のあいだに、Live onの尾角光美さんの訪問もあり、いっそうバタバタなのであった…。