そんな私が大学時代にはまったアニメーションは「新世紀エヴァンゲリオン」であった。それも4回生の頃だ。既にテレビ放送は終わっており、LD(レーザーディスク)等が発売されていた。そのビデオを、地球温暖化防止京都会議(国連気候変動枠組み条約第三回締約国会議:COP3)のために動いていたNGO「気候フォーラム'97」で共に事務局員として働いていた方に紹介され、一気にはまったのである。
はまったのには理由がある。というのも、当時の私は、1995年にドイツのボンにて開催されたCOP1にて決定してた「COP3で地球温暖化防止のための議定書を策定する」という当初目的が達成されるよう気候フォーラムで働きつつ、その内容を立命館大学理工学部の卒業論文にまとめ、さらには翌年度から開始する財団法人大学コンソーシアム京都のインターンシップ・プログラム「NPOネットワークシステム」コースの基本的な枠組みの検討にあたっていたためである。なぜそれではまるのか?そこが鍵である。
はまったの理由は、主人公「碇シンジ」がつぶやく「逃げちゃダメだ」というセリフが、ズシンと音を立てて自分に響いたためである。実は今日はそのことを久しぶりに思い返したのだ。なぜなら、国際ボランティア学会第8回大会の準備を、その「新世紀エヴァンゲリオン」が嫌いだけど見てはまった経験のある方とともに進めたためである。「逃げちゃダメだ」というセリフを無言でつぶやきつつ、しかしその準備作業の労をねぎらうためにお寿司屋さんに行くという暴挙に出て、飲酒の上に満腹のお寿司を食したために、当面この「逃げちゃダメだ」というセリフをつぶやきつつ、仕事の回復運転に当たらねばならなさそうだ。
新世紀エヴァンゲリオン
volume 1 使途、襲来
我々は何を創ろうとしているのか?:連続アニメーション『新世紀 エヴァンゲリオン』が、スタートする前に
volume 1 使途、襲来
我々は何を創ろうとしているのか?:連続アニメーション『新世紀 エヴァンゲリオン』が、スタートする前に
4年間逃げ出したまま、ただ死んでいないだけだった自分が、ただひとつ
『逃げちゃダメだ』
の思いから再び始めた作品です。
自分の気分というものをフィルムに定着させてみたい、と感じ、考えた作品です。
それが、無謀で傲慢で困難な行為だとは知っています。
だが、目指したのです。
結果はわかりません。
まだ、自分の中でこの物語は終息していないからです。
シンジ、ミサト、レイがどうなるのか、どこへいくのか、わかりません。
スタッフの思いがどこへいくのか、まだわからないからです。
無責任だとは、感じます。
だがしかし、我々と作品世界のシンクロを目指した以上、当たり前のことなのです。
『それすらも模造である』
というリスクを背負ってでも、今はこの方法論で作るしかないのです。
私たちの『オリジナル』は、その場所にしかないのですから……
(GAINAX, 1995, p.173)
庵野 秀明 (1995) 我々は何を創ろうとしているのか?:連続アニメーション『新世紀 エヴァンゲリオン』が、スタートする前に GAINAX(原作) 新世紀エヴァンゲリオン(1) 角川書店
庵野 秀明 (1995) 我々は何を創ろうとしているのか?:連続アニメーション『新世紀 エヴァンゲリオン』が、スタートする前に GAINAX(原作) 新世紀エヴァンゲリオン(1) 角川書店