順番が前後したが、大阪市長選、私が応援していた橋爪紳也さんは結果として惨敗だった。4人の選挙戦、などと言われたものの、結果は4位、89,843票であった。この数は、有権者数が2,073,215人、投票者総数が904,054人、有効投票数が895,730人であるから、有権者の4.33%、投票者総数の9.93%、有効投票数の10.03%を獲得したことになる。ちなみに、今回の投票率は43.61%だった。前回が33.92%であったから、ある程度の伸びを見せたことになる。
そんな選挙の結果に対して、「惨勝」なることばを用いたくなったのはなぜか。ある民放は20時2分に「平松候補に当確」と速報を出したのだから、完勝ではないか、そんな声も聞こえてきそうだ。しかし、自ら「シロウト」と言い、政策ではなく「夢」を語り、そもそも政党に推されたからと言って立候補して当選した方に、大阪市の窮状を切り盛りすることができるのだろうか?もちろん、政権交代できる政治風土を生むことが必要だということには充分な理解を抱いているものの、政党と政策の両面から選ばれてしかるべきではないのか。
投票が締め切られた20時過ぎより、私は橋爪紳也事務所に、大蓮寺・應典院住職と訪問させていただき、一連の会見の場に立ち合わせていただいた。報道各社の質問の最後に「敗因は何だと思いますか」と投げ掛けられたのだが、そこで「勝者に勝因はあるが、敗者に敗因はない」と橋爪さんが応えたのが実に印象的だった。市民に推され、市民の呼びかけや投げ掛けを通じてバージョンアップを図ったマニフェスト、「各候補の支援団体やマニフェストの評価を比較する異例の法定ビラ」など、橋爪さんが遺した市政への問題提起に、われわれは、また民意の反映として選出された新市長はどのように向き合うのか、真摯な姿勢が問われている。ともあれ、少なくとも投票率が延びたことは事実なのだから、ちょうど手元に10月31日に開催された、橋爪さんの出版記念パーティーの際に頂戴した書物にもあるとおり、よりよい都市を創造するために、それぞれがより深い貢献をしていく必要があろう。
あとがきにかえて ドバイで考えたこと
(前略)想像の翼を拡げる立場にあるのは、経済成長をとげつつある都市の住民だけではない。誰もが自分たちの価値観の変化や科学技術の進歩に応じて、また環境問題など人類共通の課題が現前化するにつれて、新たな生活を創案し、新たな空間を発明し、かつての都市のうえに新たな都市を重ねてゆかなければならない。
少子化と極端な高齢化社会という状況に直面している日本の都市に暮らす私たちも例外ではない。転機にあるがゆえに、将来の世代に託すに値する都市の姿を私たちは発明する必要に迫られている。そのためには諸外国の都市に学び、今日における普遍性を知るとともに、比較する視点を持って自分たちの都市に潜む固有性を確認する作業も不可欠だ。
(後略)
(橋爪, 2007, p.178)
橋爪 紳也(2007) ゆく都市 くる都市 毎日新聞社
(橋爪, 2007, p.178)
橋爪 紳也(2007) ゆく都市 くる都市 毎日新聞社