台湾・淡江大学と立命館大学との学術交流プログラム「TRACE2013」3日目、今日は宮古市内の2つの場所で学生らによる企画が行われた。台湾の伝統デザート「愛玉」ゼリーづくりと、死者への弔いなどに用いられる「天燈」飾りづくりを行う、というものである。ゼリーづくりというと手間がかかりそうだが、愛玉という亜熱帯植物の種を水の中で手もみするだけで成分がにじみ出て、その後は常温で置いておくことで、固まっていく、というものである。「天燈」は、言わば「飛び上がる走馬燈」のようなもので、ちょうど熱気球のように気化熱を用いて、小さな紙風船のようなものに思いを綴り、中には油をしみこませた紙を入れ、火をつけることで天に上昇するものだ。
今回は、鍬ヶ崎蛸ノ浜にある集会所「ODENSE2」と、中央通商店街の「おでんせプラザ」の2箇所で、この企画を実施した。ODENSE2での開催には、立命館災害復興支援室による後方支援スタッフ派遣プログラム第7便の参加者による継続活動団体「R7」のメンバーも合流した。ODENSE2とは、立命館大学理工学部の宗本晋作先生が中心となって建築したものであり、同じく震災後に宗本先生らによって宮古市の重茂地区に立てられた簡易集会所ODENSE(1とは言われていない)の工法やデザインモチーフが用いられている。ちなみに「おでんせ」とは「おいでください」という敬語表現の方言であり、多くの方に集って欲しいという願いを見て取ることができる。お昼前からの雨も重なって、人の出入りはあまり多くなく、ODENSE2で20名ほど、おでんせプラザで5名ほどの参加者を得て、無事に企画は終了した。
終了後は、宗本先生を含め、鍬ヶ崎のまちづくり協議会の皆さんのお招きで、懇談会に出席させていただき、石井布紀子さんと久々の再開をするという貴重な時間を送ることができた。ちなみにこの懇談会は、末広町商店街の「つくし」で開催されたのだが、この参加費が「2,000円+飲み代」と案内したところ、「いくらかかるか不安なので参加しない」という学生が続出した。今回、立命館大学生が10名、淡江大学生が6名参加しているが、出席したのは立命館大学の2名だけである。「人数は直前でも構わない」と仰っていただいていたものの、結果として料理を30人前ご用意いただいていたことを現場で知り、かつてのドラマ「スクール☆ウォーズ」の元となった、京都市立伏見工業高校ラグビー部の逸話として、部員が試合をボイコットし、監督が相手チームに謝罪するシーン(プロジェクトXにて再現されている)を想い起こした。
機会損失という言葉がある。その名からも想像できるように、ある資源を投入しないことによって何らかの結果や成果や波及効果を得る機会を喪失してしまい、再度、そうした機会を創出しようとしても、膨大なコストがかかる、ということを示唆する概念である。ちなみに昨日の夜は、ファミリーレストランに向かう学生たちをよそに、1945年に開店し、東日本大震災により休業、2012年1月に移転の後に再開した喫茶「たかしち」さんでいただき、今日の昼はODENSE2の建設の際にも学生たちに便宜を図っていただいたという鍬ヶ崎の「魚正」さんにお邪魔した。それぞれにマスターや大将と呼ばれる方々の「主」としての姿は、結果として「客」の側に迎え撃つ上での心構えが求められるような気もするが、復興について触れるならば、やはり、まちの担い手である一人ひとりに誠実でありたいと願うところである。