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2014年1月23日木曜日

なくしたものの埋め合わせ

注意が足りていない。とはいえ、目の前の何かに問われているわけではない。むしろ、目の前の風景の先にあること、つまりは次の予定や、終えられていない予定に囚われる傾向がある。そして、気づかぬうちに、何かを落としてしまうことがある。

そもそも、今日は終日、原稿に向かう予定であった。この予定も数ヶ月前に終えられていなければならないものであったが、午後に京都駅での打合せが入ったために、市バスの一日乗車券を購入して、気分転換の一日にしよう、そんなことを考えた。相棒としてデジタル一眼レフカメラを選び、鞄に入れて家を出た。妻の出勤時間にあわせて、である。

思えば、昨日、應典院に鍵束を忘れたことが、今日に響いている。妻には安眠を妨害するという不幸をもたらしたものの、昨晩は幸いなことに妻が枕元に電話を置いて寝ていたいたため、なんとか家に入ることができた。そこで、今日は京都方面に移動する應典院のスタッフに鍵を運んでいただき、京都駅で受け取らせてもらう、そんな手はずを整えた。そこに、小さな気のゆるみが出たかもしれない。

結果として、今日は愛用の帽子をなくしてしまった。こどもの頃に読んだ「ドラえもん」の「落とし物つりぼりとつりざお」があれば、などと思いながら、思い当たる場所に問い合わせてみるも、残念ながら見つからなかった。そこで、交番に向かい、遺失物届を出したのだが、警察官からは「どこで落としたんですか」と、「それがわかったら苦労しないよ」という問いかけがなされるのだが、私の隣では財布をなくした左京区在住の大学生が、同じような質問を投げかけられていた。「どう帰ったらいいのか」と途方に暮れていた彼を放っておけないと思った私は、「もう、この一日乗車券は使わないから、どうぞ」とやさしい嘘をついて、物をなくした悲しみを、物語で埋め合わせをして、妻に怒られに家路につくのであった。