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2017年5月2日火曜日

ことばのひびき

日本語では比喩やレトリックを難なく使えるが、英語環境では易々とはいかない。もちろん、言語が変わったとしても、議論の対象について表現をずらしながら概念に迫っていくという、論理的な展開の構造は変わらない。しかし、圧倒的に語彙数が足りない。そして定型句や慣用句を知らないために、言葉のリズムを創り出せないのである。

出国前からデンマーク語の自学を重ねてきた妻は、今日からデンマーク語のクラスに通い始めた。一方、私は明日の英語でのセミナーの予習を行うことした。絶対的に英語に触れる機会が増えた分、何より触れざるを得ない環境にいる分、読むことへの意欲と、読み終える時間は短くなっている気がする。しかし、たとえ専門分野の文献であったとしても、母語のように読みこなすことはできず、語ることも、ましてや綴ることなど、もどかしさを抱かざるを得ない状況にある。

自宅で英語に触れる中、日曜日に訪れたコペンハーゲンでの「Sakura Festival」のバザーで入手した『コペンハーゲンの街角から』にも目を向けた。著者は東京・猿楽町にあるデンマーク大使館にて上席政治経済担当官をされている寺田和弘さんである。出版は2003年で、1999年から2年間、日本商工会議所からデンマークの日本大使館に専門調査員として勤務されたあいだの経験を書籍にまとめられたものだ。寺田さんとは2016年の「ことしもまた、新たなえにしを結ぶ会」大熊由紀子さんが縁結び役の会)でご縁をいただいているのだが、今となってはブログなどで気軽に体験を言葉にすることができるものの、こうして文字にまとめあげる丁寧さに敬服し、拝読した。

書籍の中で、寺田さんもまた、デンマーク語が話せない中で渡航(デンマークは丁抹と記すため、渡丁とでも言うのだろうか…)されたとあった。「小国」と安易に括ってしまうことへの躊躇なども記されていたものの、「小国であるがゆえに、デンマーク人にとって外国語、とりわけ事実上世界の共通言語となっている英語の習得はグローバル化した現代社会において生きのびるために必要不可欠となっている」(P.77)と示されている。逆に、寺田さんの見立てとして、デンマーク語が外国人に難しい理由として「発音が難しい」(P.73)、「コペンハーゲンではデンマーク語を話さなくても生活できる」(P.74)、「外国人のデンマーク語学習人口が少なく、そのため外国人への語学教授法がいまひとつ確立していない、少なくともデンマーク語の語学教材や学校があまりない」(P.75)の3点を挙げている。はてさて、そんなデンマークのオールボーというまちで、デンマーク語を学び始めた妻と、必死に英語と格闘している私、帰国時にどうなるのやら、あにはからんやの展開はありうるのだろうか。