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2017年9月27日水曜日

ことばを預けるということ

「研究とは、誰かのことばを自分のことばに、そして自分のことばを誰かに預ける実践である。」今日はふと、そんなことばが思い浮かんだ。1年間、デンマークで学外研究の機会を得ている今、改めて研究とは何かに向き合っているためでもある。思えば今の所属である立命館大学では、全学の教養教育の担当のため、論文指導をする学生がいないということも影響している。

水曜日の今日は、オールボー大学の文化心理学研究センターによるキッチンセミナーであった。先週は日本心理学会のため一時帰国をしていたため参加ができなかった。先々週もまた、アイルランドでの国際サービスラーニング・地域貢献学会のため、参加できなかった。よって2週間ぶりの参加だったが、冒頭、キッチンセミナーは20年前の9月末に始まったとのことで、そのお祝いのために手元の飲み物(概ねコーヒー)で乾杯することになった。

今日のテーマは「更正制度における対話の場と心理学」だった。話題提供者はブラジルのサンパウロから、インターネットで接続して行われた。ちなみにキッチンセミナーでは土曜日の正午ごろに水曜日のための資料が届き、参加者はそれを読んだ上で臨むことがルールとなっている。キッチンセミナーの名のとおり、提供される資料は真名板の上に乗せられることになり、参加者というシェフによって調理の素材として吟味され、料理されていく。

今日は私の指導教員の一人、Mogens先生も参加されていた。途中、心理学者の役割について「対象となる人々に対して、新たな方法を探り、変化をもたらす、そのために挑戦することも必要」とコメントされた。これは刑務所において、受刑者に対して心理テストを行い評価するだけの役割だけでなく、受刑者も刑務官も心理学者もそれぞれに快適で自信を持つことができるような環境づくりのために対話が重要ではないか、という仮説に基づいた議論が行われたことによる。ふと、立命館大学で行われてきた修復的司法」の取り組みと、應典院において劇団「満月動物園」により3度(2014年9月2015年1月2017年1月)行われた「加害者家族」の新書朗読のことを思い出し、自らの研究の冷凍庫に眠っていた食材を見つけた気がした。