日本への帰国の準備を進めている。片付けなければならない仕事があるものの、部屋や荷物の片付けも必要である。かさばるものを減らそうと、紙資料は出来る限りスキャンによるPDF化を進めた。そもそも、こちらで得た文献の多くは、最初からオールボー大学図書館が講読する電子ジャーナルであるため、そもそもその作業が必要とされず、ダンボール何箱の梱包をせずに済みそうである。
デンマークにやってくるときには、衣類や食材を何箱か送った。食材は食べることで経る。衣類については、何度かの一時帰国の際に、季節感を見誤ったものを持ち帰ることにした。特に半袖の夏服はほとんど不要だった。
今日は生協に買い物にいくついでに、持ち帰らないと決めた服の一部と、デポジットが乗せられたボトル類を持っていくことにした。服はセーブザチルドレンの回収箱に入れ、後々にリサイクルショップで販売されることにより、資金調達につながる、というシステムである。一方で、デンマークで販売される飲料ボトルには「Pant」というシールが貼り付けられており、 1リットル以下のガラス瓶と缶には1クローネ、1リットル以下のペットボトルには1.5クローネ、1リットルから20リットルの瓶・ペットボトル・缶には3クローネのデポジットが乗せられている。これらをスーパー等に設置された回収器に入れる際には、自分の買い物用の金券とするか、寄付にするかを選ぶことができる。
生協での回収器での選択ボタンをよく見てみると、この機械では「Hus Forbi」に寄付されることになっていた。さしずめ、デンマーク版のビッグイシューで、Google翻訳を使って公式サイトの紹介を読んでみると、国連の国際貧困年かつコペンハーゲンがヨーロッパの文化首都とされた1996年の8月に創刊され、毎月1回発行されている(登録販売員は2,750人)という。雑誌を編集・発行・販売する目的は「ホームレスと社会的に排除された人々が路上で対話する機会の促進」と「それらの人々が物乞いや犯罪に手を出すことへの代替策として稼ぐ機会の創出」にあり、1冊20クローネの代金のうち、販売員が8クローネ、10クローネが生産、管理、流通の経費(販売員の制服を含む)、2クローネが税金、という構成になっている。国立福祉研究センター(SFI:the National Research Center for Welfare)の調査によれば、移民でも生活保護の受給資格があり(しかし、受給後には住居費の支払いや納税義務があるものの)高福祉のデンマークにあっても、デンマークでは(特に若年者の)ホームレスが増加傾向にあり、2007年には約5,000人(そのうち500人が路上生活者)だったのが、2017年には約6,600人(そのうち660人が路上生活者)となっており、ああ、早く知っていれば、自分の買い物のためだけでなく、寄付に充てていってもよかったと、帰国間際になってデンマークの寄付文化に浸っているのであった。