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2008年1月4日金曜日

アーツ・マネジメント史〜「アーツ・マネジメント」

 今年の年賀状に、改めて、自分が担っている仕事を列挙してみた。実は初期バージョンには1つ、記すのを失礼してしまったのだが、それにしても、多くのご縁と期待をいただいているものだと感じ入るところであった。一方で、そうした役割に対して、充分な成果を遺すことができていないように思えてならない、という反省にも駆られた。今年こそはそうしたことのないよう、努めていきたい。

 そんななか、今日は新年早々、世話人と事務局長をさせていただいている「大阪でアーツカウンシルをつくる会」の合宿が行われた。場所は我が家で、である。インターネットが使えて、ゆっくりできるところ、その結果、我が家で行っていただくこととなったのだ。十分片付けができていなかったものの、参加いただいた皆さんのやさしさで、議論と鍋を堪能することができた。

 議論の中心は、「会員制」の組織ゆえに、会員のみなさんと、どのようにして共に活動を展開できるか、ということであった。実際、名前にも込められているように、アーツカウンシルが「できる」よう、ともに活動を「つくる」必要がある。今回の合宿で決まったのは、1月の大阪府知事選挙に出馬表明された方々への公開質問状を送付すること、2月に今年度の活動をまとめるためのワークショップを行うこと、そして3月には大阪市の文化行政担当者を招いた公開勉強会を行うこと、である。そうやって会員の皆さんと共に、時間と空間を共有すると共に、実際「できる」ためにどうしたらいいのかについて、鍋をつつきながらの議論は実に盛り上がった。

 もちろん、日頃から議論は行っているものの、どうしても時間的な制約があって、存分に語り合うことが難しい状況にあった。そこで今回合宿の運びとなったのだが、年始の気分もかさなりつつ、終了の時間を気にせずに、それぞれの思いを形にすべく語ることで、大いなる楽しみを味わうことができた。ちなみに、メンバーを知る人にとっては、ある意味驚きであり、ある意味納得かもしれないが、鍋の後にはカラオケに出掛けることとなった。そんな風にして密なるコミュニケーションも重なった「大阪でアーツカウンシルをつくる会」の2008年は、一層活動に厚みが増すことと確信している。



アーツ・マネジメント史

1.アート制度とアーツ・マネジメントの歴史(抜粋)




 近代アート制度は、アーティスト・アーティスト組織、彼らを援助する人々・組織・制度からなる。後者は、さらに直接的にサポートする人々と間接的にサポートする人々からなる。直接的に援助をするのは、個人的なパトロンやアーツカウンシル(芸術評議会)や芸術NPOなどの組織であり、間接的にサポートするのは、批評家や行政機関などの評価者、そして、美術・音楽・演劇などを観賞する鑑賞者などである。アートは、自由な自己表現に基づく産物であり、本質的に、近代的な官僚制的な制度とはなじまない性質の活動である。その意味で、近代的な資本主義経済−−勤勉な競争原理に基づく価値創出活動−−とも、なじみにくい性質を持つ。しかし、その一方で、社会が成熟していくにつれて、人々の求めるものが自己表現であり、自己実現であり、その究極の活動の一つが芸術活動でもある。近代社会の発展につれて、この一見矛盾する二つのプロセスが、一つの社会の中で同時に進行してきたのである。その結果、アーティストの数が大幅に増え、そのアートを観賞する人々の数も増大した。しかも、その一方で、アーティストやアーティスト集団を支える人々とその組織や制度が機能分化し、発展してきたのである。また、アーティストと鑑賞者を媒介する組織や制度も洗練、細分化してきた。それらの革新的な発展の多くは、西欧社会、特にイタリアやフランスなどの社会に端を発してきたのである。



川崎(2002, p.22)







川崎賢一 2002 アーツ・マネジメント史 川崎賢一・佐々木雅幸・河島伸子 アーツ・マネジメント 放送大学教育振興会  p.21-31.