Amazonという書店がある。言わずと知れた、ネット書店だ。今ではKindleというデバイスを発売し、本にまつわるビジネスの根本をイノベーションしている企業と言えるだろう。実際、Kindleのコンテンツ印税を7割という設定にしたことは、出版会社や著者に大きな衝撃を与えたと思っている。
もちろん、人々に便利さが提供されることは、よりよい社会が導かれていく上で重要な要素だ。事実、私もAmazonは重宝しているネットサービスの一つである。とりわけ、マーケットプレイスは、入手困難な書籍を手に入れる、最も簡単な手段であると感じている。また、学生等は、Amazonのカスタマーレビューを、レポート等の参考にしているとの声も聞く。間もなく発表、発売のAppleのiPadも、Amazonの躍進がなければ、そのコンセプトを固めきれなかったところがあるのではないか、と考えている。
とはいえ、應典院の秋田光彦代表(大蓮寺住職)が、以下のようにTwitterでつぶやいているとおり、ネット書店の浸透を客観的に見つめる視点も大切だ。転じて、グローバル企業との関わり方についても、熟慮できる素養を持っておきたい。こうした市民知、あるいは社会のリテラシーが高まらなくては、イノベーションとソーシャル・イノベーションが区別され続けることになるだろう。先般、Twitterでも多くのつぶやきを招いたことで知られているグロービスの堀義人さんの指摘も、まさにこの点について触れられたものであると思われ、2月19日のブログ「社会起業家vs起業家」で示された点に目を向ければ、「社会」ということばについて、「冠に掲げられること」よりも、「冠に掲げること」による危うさ、落とし穴を、とりわけNPO・NGOの側が持たねばならないのだ、と受け止めたところである。
ともあれ、そんなAmazonから、本日、3月1日発売の「The Power of Social Innovation : How Civic Entrepreneurs Ignite Community Networks for Good」という本の案内が届いた。以下に目次を挙げるが、非常に興味がそそられた。英語は得意な方ではない(カタカナは得意である)ものの、何となく、意訳をしながら、日本語にしてみた。既に同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル/イノベーション研究コースのメーリングリストに、読書会、あるいは、可能であれば、翻訳出版ができないか、と投げかけてみたところであるが、当然、今の私に率先してプロジェクトを進めていくだけの余裕はなく、どこかで他力本願になっているのであった。
The Power of Social Innovation: How Civic Entrepreneurs Ignite Community Networks for Good
ソーシャル・イノベーションの力:市民起業家がよりよいコミュニティ・ネットワークに火をつける
Part I: Catalyzing Social Change.
パートI:社会的な変化への触媒作用
Chapter 1 Igniting Civic Progress.
Entrepreneurship, Innovation, and Change.
So Many Ideas, So Little Progress.
Civic Entrepreneurship as the Solution.
Igniting Civic Progress.
The Mandate and Caution of Engaging Government.
Conclusions.
第1章 進歩的な市民に火を着ける
起業家精神、変革、変化
多様なアイデア・わずかな進歩
問題解決策としての市民起業家
進歩的な市民に火を着ける
魅力的な政府の委任・警告
結論
Chapter 2 Innovation as Catalytic Ingredient.
Discovering the Missing Ingredient.
Choosing the Right Catalyst.
Bringing It All Together: The Nehemiah Foundation.
Conclusions.
第2章 触媒としてのイノベーション
見失っている要素を見出す
妥当な触媒を選択する
先進事例:ネヘミヤ財団。
結論
Part II: Market Maker as Civic Entrepreneur.
パートII:市民起業家という市場創造者
Chapter 3 Open Sourcing Social Innovation.
Breaking Down Protectionist Barriers.
Opening Space for Innovation.
Leveling the Playing Field.
Inviting the Exceptional.
Forcing Cultural Change.
Bringing It All Together: The Enlightened Monopolist.
Conclusions.
第3章 ソーシャル・イノベーションとオープンソース
保守派の障壁を断ち切る
イノベーションのために場を開く
活動範囲の平準化
卓越したものを呼び込む
文化変容の促進
先進事例:The Enlightened Monopolist
結論
Chapter 4 Trading Good Deeds for Measurable Results.
Current Funding Limitations.
What Public Value Are We Purchasing?
Are the Funded Activities Still the Most Relevant?
What Change Does the Community Want and What Assets Can It Mobilize?
Are We Funding a Project or Sustainable System Change?
What Will We Measure?
Bringing It All Together: Linda Gibbs.
Conclusions.
第4章 定量的な成果を見極めるために善行を重ねる
現状における資金調達の制約条件
われわれが手に入れられる公共的価値は?
受託事業は組織のミッションとかけ離れていないか?
ソーシャル・イノベーションではどのような地域資源が動員されるか?
資金の投入は事業のためか、持続可能なシステムへの変化のためか?
われわれの価値基準は何なのか?
先行事例:Linda Gibbs
結論
Part III: Service Provider as Civic Entrepreneur.
市民起業家というサービス・プロバイダー
Chapter 5 Animating and Trusting the Citizen.
Balancing the Professional with the Public.
Building a Public.
Leveraging Social Media for Change.
"Client" Choice.
Curing the Expectation Gap.
Bringing It All Together: Family Independence Initiative.
Conclusions.
第5章 市民の行動力と市民への信頼を高める
公とのあいだで専門性を分散させる
公共性をつくる
社会メディアを活用した社会変革
「顧客」の選択・「顧客」からの選択
期待との齟齬を埋める
先行事例:Family Independence Initiative
結論
Chapter 6 Turning Risk into Reward.
Seeing Opportunity Where Others See Liability.
Taking First Risk.
Fully Calculating Cascading Return on Investment.
Political Risk and Reward.
Bringing It All Together: Wraparound Milwaukee.
Conclusions.
第6章 リスクを報酬へと転換を図る
他者が抱く障害要因をチャンスに捉える
最初のリスクを負う
段階的な投資利益率を完全に計算する
政治的なリスクと報酬
先進事例:Wraparound Milwaukee
結論
Chapter 7 The Fertile Community.
The Fertile City (and the Entrepreneurial Mayor).
Civic Entrepreneurs and School Reform.
Entrepreneurial Community Solutions.
Staying Entrepreneurial: Saving Yourself from Success.
The Future.
第7章 創造力豊かなコミュニティ
創造都市(そして起業家的首長)
市民起業家と学校改革
起業家のコミュニティ・ソリューション
起業家的で有り続けるために:成功に謙虚であれ
展望
ちなみに、既に日本語の翻訳の話が進んでいるかもしれません。あるいは、動きが速い、東京の方々で、チームが発足しているかもしれないです…。