「ウケ狙い」のタイトルにしてしまった感もある。しかし、逆にそうして思考や着想の「枠」ではなく「軸」を定めたことで、ことばを紡ぎやすかった気がする。朗読は淡々とさせていただいたつもりだが、少しことばを加筆修正して、以下に刻んでおくことにしよう。何より、大切な思い出を思い出し続けられるよう、願いを込めて。
お寺の神様?
泣けてくる歌に、時々出会う。
ことばと伴奏の「合わせ技一本」で、
懐かしい思い出に、攻め入ってくる。
ただ、泣かせる歌は、最後まで聴けないことがある。
ふと、泣かされる歌だと、とっさに思うからだ。
いい思い出と、つらい思い出の混ざりあう中で、
やさしくできなかったことへの悔いがこみあげてくるためだ。
この春知った「トイレの神様」はその典型。
題名をあなどって、
サビの前でこらえきれず、
無言のなま、涙が頬を伝っていった。
見えないものが大事なことを、「星の王子さま」の物語を借りて伝えたことがあるけど、
「トイレそうじをちゃんとしようね」って、
神様という物語を借りて孫に伝えるおばあちゃんを歌った歌。
わかりすぎるくらい、わかっちゃったのだ。
実家を離れて17年。
再来年になったら、実家で過ごした時間は人生の半分以下になっちゃうけど、
いろんな物語を残してくれた実家の記憶は、
ずっと、ちゃんと思い出していこう。
お寺に神様はいないとされるけど、
今、場所の力が、
物語を思い出させてくれている。
墓地でボチボチ、考えていこう。
はかないいのち
はえあるいのち
たいせつないのち
つながるいのち
2010年8月4日 應典院「詩の学校」お盆特別編「それから」にて。(於:浄土宗大蓮寺墓地)