いよいよ原稿の締切が明日に迫った。本来、水曜日はオールボー大学コミュニケーション・心理学部の文化心理学研究センターによるキッチンセミナーの日なのだが、お休みさせていただいた。原稿に集中のため、である。ところが、昨日のコペンハーゲンでの自然体験が響いたのか、長めの昼寝をしてしまった。
キッチンセミナーに行ってペースメイクも考えたのだが、昼寝の後は執筆に集中した。既に図や表の候補は先週に作成を終えていたし、引用する文献の収集と読解も、この数日のうちに終えていた。確か高校2年生のとき、「入試に小論文のあるところは辞めたほうがいい」と言われたのが悔しく、Z会の『小論文教室』を読み、確かに得意ではなかった文章書きに向き合うこととした。もちろん、今となっても「大得意です」などとは言えないが、それなりに言葉と論理構成にこだわって、伝えたいことを伝えようという気にはなっている。
デンマークには11インチのパソコンと17インチのパソコンを持って来た。それらに加え、7.9インチのタブレットと、A4サイズのノートを活用して、物を書き、文章を編んでいく。絵を描く才能には恵まれなかったものの、恐らく、絵描きの方も、大小のキャンバスを気分で使い分け、道具を選び抜き、一つの作品を仕上げていくのだろう。そして、同じ道具が使われながらも多彩なキャンバスに、作品として仕上がらない数多くの習作が残されていくというという点も、物書きの振る舞いに通じるものだろう。
お昼前、ふと外に目を向けると、真下には刈り込まれた直後の芝生の緑が、目の前には紫色の花をつけた新緑が、そしてその背後には鮮やかな青い空が飛び込んできた。デンマークにはパソコンだけでなく、カメラも何台か持って来ているので、スマートフォンだけでなく、ファインダーを覗いて撮影もしてみた。大きい画面で見直してみると、最初にフィーリングで撮ったスマートフォンのものが最もしっくりくるものとなっていた。この1週間、準備を重ねてきた原稿も、ふと手を伸ばしてメモをした言葉が内容を深めるキーワードになったところもあり、凝り固まった身体からは納得のいくものは生まれないのだろう、と一息ついて思うところである。