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2017年5月29日月曜日

過去を引き受けるということ

謝罪とは、相手が「もういいよ」と言ってくれるまですること、と聞いたことがある。特に、2015年の夏、鳩山由紀夫元首相が大韓民国で講演した際に、内田樹先生が示した論理を引用したことでよく知られるようになったのではなかろうか。内田先生は「無限責任」という観点から、誰かが何かの責任を取ることは基本的には困難であることを示している。いささか雑な要約となるが、内田先生の師匠であるレヴィナス先生が示したところによると、無限責任を回避するルールとして「同罪刑法」(ハンムラピ法典で知られる「眼には眼を、歯には歯を」など)を定めたものの、それは全く同じ苦しみを味わうように仕向けることではなく相手の未来を「台無し」にして区切りをつけるための方法である、と解いている。

今日はベルリン郊外のトーノー自然学校を午前中に出て、オラニエンブルクにあるザクセンハウゼン強制収容所跡に向かった。公式サイトFacebookページでは日本語での情報提供はないものの、いくつかのサイト(例えば、Wikipedia日本語版での項目でも一定の解説がまとめられている)でやブログ(例えば、ベルリン在住の中村真人さんのブログでは(1)(2)(3)(4)(5)と5回にわたって詳述)により日本語での情報収集ができる。もし、これから行こうという人には、交通手段(鉄道駅からは徒歩15分から20分、バスは2系統で場合によっては1時間に1本ないときもある)も含めて、予習をしていくことを強くお薦めしたい。ちなみに英語が理解できる人には、0.5ユーロの施設案内(こちらも日本語はない)や3ユーロのオーディオガイドのレンタルの上、朝から晩まで過ごすといいだろう。

もちろん、と言ってピンと来る人がどれだけいるかわからないが、収容所跡の記念施設・博物館は入場無料である。見世物ではなく、遺物を遺産として扱っていくという意味において、ドイツが歩む一つの道なのだ。もちろん、こうした姿勢を過大に評価しては、本末転倒となってしまう。ただ、文字で伝え、声で語りかけられ、それらに加えて現物の中に身を置く環境を遺していること、その意味を多くの人に考えてもらえるよう、足を運んでもらえればと願っている。

夕方には、ベルリンのモーリッツプラッツ(Moritzplatz)の一角にある、プリンセスガーデン(Prinzessinengärten)に足を運んだ。ここは半世紀ほどにわたって不法投棄されていた場所をNomadisch Grünという非営利団体により、市民に開放する庭園、菜園、農園、環境教育の拠点、オーガニック&ローカルフードのレストラン、イベント会場に再生した場である。近くにはベルリンの壁を遺したイーストサイドギャラリーがあり、そこまで足を伸ばした。現在には過去があり、過去を見つめた現在から未来が見据えられるということ、改めてドイツで感じ、見つめ、考えた。