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2017年7月14日金曜日

研究の幅と軸

「社会変革に挑戦する心理学」をテーマとする第15回ヨーロッパ心理学会の最終日、午前中には3つのセッションに参加した。まずはミニシンポジウム「Voluntary euthanasia and ethical psychological practice」で、安楽死を自殺と区別するために心理学者が果たす役割について、各国の事例を学んだ。続いてカナダにあるレジリエンス研究センターのMichael Ungar先生による「"Diagnosing" Resilience Across Cultures and Contexts: Understanding the Impact of Social and Physical Ecologies on Human Development」と題した講演では、東日本大震災後の岩手県山田町の事例などに触れられ、7つのプロセス(negotiate identity, nurture relationships, facilitate cultural adherence, promote social cohesion and belonging, access material resources, promote social justice,  experience power & control)の解説が興味深かった。そしてミニシンポジウム「The Future of Democracy: Readiness of European Youth for Citizenship」は、8月に刊行予定の「Young People and Active Citizenship in Post-Soviet Times
」に基づいたセッションで、中でも香港教育大学のKerry J Kennedy先生による市民性の分類方法が興味深く、終了後には名刺交換をさせていただいた。

ランチの後は2つのセッションに参加し、幅広い視点を得た。ちなみに12日と同じく、ランチはサンドウィッチとパンとフルーツなどを自由に取っていくというスタイルだった。その後で向かったのが「Psychosocial Needs of Refugees」というミニシンポジウムで、特に社会心理学者による難民の分類に関心を向けた。その後はカナダ心理学会の倫理委員会のCarole Sinclair委員長による「The impact of globalization on psychological ethics: Are we better prepared to meet the challenges that face us??」という講演を聞きに行き、時代は変われど(1)Respect for the Dignity of Persons and Peoples(対象への敬意と尊厳を抱く)、(2)Competent Caring for the Well-Being of Persons and Peoples(対象の幸福を願って適切に気遣う)、(3)Integrity(対象に誠実に向き合う)、(4)Professional and Scientific Responsibilities to Society(社会に対して専門的かつ科学的な責任を果たす)の4つが心理学者には求められるという指摘に納得した。

夕方にはポスターセッションの会場に足を運んだ。初日もスポーツ健康科学部の山浦先生を代表とする発表がなされていたが、今日は立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)専門研究員の川本静香先生を代表とする発表がなされていた。川本先生は一貫して自殺と鬱について取り組んでおられ、そうして一貫した研究の軸を貫いていることに敬服する。今回は薬による治療とカウンセラーによる療法に対する意識を共起ネットワーク分析で比較したものであった。

ポスター発表の後はクロージングセレモニーとなった。初日の山浦先生らの発表が優秀発表の候補に選出されていたので、共同研究者のサトウ先生らと共に選考結果を知るために参加した。残念ながら選ばれなかったが、今回の大会で川本先生が知り合いとなった上智大学の大学院生と夕食を取ることにした。在オランダの日本人がおすすめするレストラン情報を参考に、アンネ・フランクの家の近くにあるフラミング(Vlaming eten&drinken)というお店に伺い、ゆったりと食事を楽しんだ。