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2007年11月22日木曜日

演技と演出

 本日、平田オリザさんの小学校でのワークショップのお世話をさせていただいた。平田さんは京都をはじめ、関西圏でも多くの小学校で演劇教室を行ってこられているものの、大阪では初めてになるという。一方で應典院とは1997年の舞台芸術祭「space×drama」以来、何度かご縁をいただいている。2006年より大阪大学に来られたことも重なり、大阪でも実演授業を、と考えた際、應典院がコーディネート役を、とご用命いただいた次第である。

 開催に協力いただいたのは、應典院の校区である、大阪市立生魂小学校だ。6年生は19人、1クラスしかない。40人学級の5クラス編成の小学校で学んできた私にとって、クラス替えなしに6年間を過ごす生活は明らかに未知の世界である。ともあれ、應典院の校区であること、さらには1クラスゆえに、不公平なしに大先生の授業を受けられるということから、大阪市教育委員会にあいだに入っていただいて、今回、開催の運びとなった。

 朝9時40分から、お昼の12時25分まで、3時間分をつかっての授業だった。皆が驚かされたのは、子どもたちが臆することなく、置かれた状況に対応していったことだった。実演授業の内容は、5人一組になり、転校生がやってきた、という物語を、その班独自の視点を盛り込んで完成し、最後に発表するというものだった。初めの1時限は概ね内容が決められたものを語尾や語用を変えて演じてみる、次の1時限は内容まで変えていく、そして最後の1時限に推敲と練習を重ねた上で4つの班がそれぞれ発表した。

 物語をつくるヒントは、「生活の中にある」と言う平田さんのことばが印象的だった。もし自分が転校生だったら、もし自分が先生だったら、もし自分が朝の喧騒の中で騒いでるとしたら、というように、何重もの「もし」に思いを馳せることで、自ずと、全員にとって合点がいく物語が出来上がる、私の整理ではそういう言い方でまとめられる。そんなふうにして出来上がった4つの物語は、実際に起こっていなかった出来事でなくとも、どこかで起こりそうな会話によって構成されている。なるほど、これが平田さんの言う対話のレッスンなのだ、と、改めて学ばせていただいたワークショップであった。



第三章 コンテクストを摺り合わせる

相手の力を利用する(抜粋)




 大事なことは、常に台詞を関係の中で捉えるということです。

 演出家の仕事は、この関係のイメージ、コンテクストを明瞭に示していくことであり、俳優の仕事は、そのイメージを的確につかんで、他者との関係を織り上げていくことにあります。

(平田, 2004, p.114)







平田オリザ 2004 演技と演出 講談社現代新書1723


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