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2015年1月5日月曜日

2015年の初仕事

長い休みが明け、今日から通常モードである。今年は4日まで、メールを返信しないという自己ルールで縛っていた。それでもタブレット端末で着信は確認していたし、完全にネットから離れていたわけでもない。それでも心なしか、ある種のストレスからは解放されていたように思う。
 2015年の初仕事は同志社大学大学院総合政策科学研究科の講義から始まった。5限の「臨床まちづくり学研究」である。ちょうど昨日、サンデーモーニングの新春特番でル・ボンの『群集心理』が取りあげられていたので、いくつかの題材を紹介しつつ、集団意思決定について迫ることにした。その後はリレー講義「コミュニティ・デザイン論研究」にオブザーバー参加した。
 この日のご担当、高田光雄先生のテーマは「コミュニティ再生と建築・居住文化」で、異なる価値観の共存が成り立っているのが「よい」まちであること、そのためのまちづくり組織では仕組みとして「タイトでオープンなコモンズ」ができていること、そのためには時間軸の視点を導入して「シナリオアプローチ」によるプロセスを重視する必要があること、この3点が説かれた。要約すれば、価値調整型のまちづくりでは、やがて互いの利害を巡って喧嘩となり、調整役が消耗する。一方で震災前から多くの取り組みを重ねてきたまちは、現在や過去の話ではなく将来像を語り合うことができるため、価値共有型のまちづくりが展開されていると捉えられる。これこそが熟考と議論を重ねた熟議(deliberation)であると、阪神・淡路大震災の際の100を越える復興まちづくり協議会の活動や、京都の姉小路界隈を考える会の活動を事例に示された。
 興味深かったのは、東日本大震災以降注目を集めたレジリエンスについて丁寧な解説がなされたことであった。高田先生によれば、最近はResilience(回復力)が変化した状況から回復することの大切さを指摘するために用いられているが、古くから都市計画等で言われてきた文脈になぞらえれば、予測困難な環境変化への対応としてRedundancy(冗長性)、Diversity(多様性)をを含んだ概念として捉えることが重要ではないか、とのことであった。これを踏まえた上で、計画論における「シナリオアプローチ」が、マクロレベルでは経済や人口や都市圏(すなわち、社会)が縮退化するという将来予測が困難な中で変化への対応力を強化し、ミクロレベルでは家族や価値観(すなわち、ライフスタイル)が多様化するという住民の行動の把握が困難な中での個人同士の相互理解を促すために実施される上で妥当となる、と語られた。終了後は焼酎の品揃えが群を抜いている烏丸今出川の「一揆」にて、新川達郎先生や、このリレー講義のとりまとめ役の弘本由香里さん(大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所)や学生の皆さんと共に、価値の共存と共有の場をご一緒させていただいた。

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