今回私が聴き手としてお話をお伺いするのは、特定非営利活動法人アートポリス大阪協議会(http://www.artpolis-osaka.com)の梅田哲さんである。アートポリス大阪協議会の歴史は1990年にさかのぼる。当時、社団法人大阪青年会議所の感性都市委員会において「アートポリス大阪」構想が発表され、具体的な内容に関する懇談会が大阪と東京に設置、そして懇談会最終報告として「10の提案」が設定されたのである。1994年には現在の名称に変更され、企業人等を中心に、大阪を文化的にも経済的にも展開可能性の高い世界都市にすべく、その後も活動が継続されている。
なお、今回、大阪アーツアポリアの方がアートポリス大阪協議会の方に事例紹介をお願いしたのは、「名前が似ているから」ということも背景の一つにあったという。同じ特定非営利活動法人(NPO法人)で、少々名前が似ているゆえ、何度か間違えて問い合わせがやってきたとのことだ。それで調べたところ、興味深い活動をしているということがあって、いつかお招きしよう、と考えていたという。それで、今回のフォーラムの趣旨を検討するなかで、最適なゲストのお一人ということになり、さらには共に現代芸術創造事業を展開している應典院寺町倶楽部の事務局長である私が聴き手を務めては、ということで今回の運びとなった。
ちなみに、私が聴き手を務めることになったのも、意味ある偶然の一致であるような気がした。というのも、私は前職(財団法人大学コンソーシアム京都)にて、経済産業省によるコンテンツ産業活性化関係の事業に従事していたことがあるためである。應典院でも映画関係の事業に取り組んできているが、私が常々不思議に思っているのは、特に映画においては「製作・配給・上映」という三層構造と「観賞」が大きく切り離されているという点がある。そんな関心も寄せつつも、当日はあまりしゃしゃり出ることなく、本来の目的である「聴き手」の立場を全うしたい。
映像コンテンツ産業の政策と経営:行政・NPO・企業の協働型創造システム
第3章 映画・映像コンテンツ産業育成支援(抜粋)
第3章 映画・映像コンテンツ産業育成支援(抜粋)
いうまでもなく、アートポリス大阪協議会の活動1つで大阪の映画・映像産業が活性化されるわけではない。加えて、市民が風待ちの受身の姿勢を保ち現状に安住しているようでは、社会が変わる者ではない。成熟化社会を迎えたこの時代に、生活に潤いを与え、社会に刺激を与える芸術・文化に対して、市民は何を自覚し、自ら何に寄与できるのか。筆者はアートポリス活動を通じ、自ら活動することに臆病であった市民と共感することで、市民の持つポテンシャルが世界に向けて開花できるものと確信している。
(梅田, 2006, p.86)
梅田 哲(2006) 映画・映像コンテンツ産業育成支援 山崎・立岡(編) 映像コンテンツ産業の政策と経験 中央経済社 76-89.
梅田 哲(2006) 映画・映像コンテンツ産業育成支援 山崎・立岡(編) 映像コンテンツ産業の政策と経験 中央経済社 76-89.