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2013年1月7日月曜日

ハレの日の決意

TPOという概念は、VAN(正確にはヴァンヂャケット)の設立者、石津謙介が定着させたという。時(Time)と場(Place)と場合(Occasion)にあわせて、着る服を選ぶべし、という提案だが、これは何も服に限ったことではない。それは「時と場による」、また「時と場合による」という具合に、日常会話においては、3つのことばが2つずつに区切って使われていることが多いことからも明らかであろう。ただ、「時と場」としたときの「場」は、静的な空間を意味し、「時と場合」としたときの「場合」は、いわば動的な空間として特定の状況で生じたある場面を意味するだろうから、この3つの語が並置されて提示されているところに、戦後の日本において新たな衣食住のスタイルを牽引した氏のセンスを伺い知ることができよう。 

本日は仕事始めということもあって、三つ揃えのスーツで出かけることにした。朝は應典院でスタッフ一同による年初のお勤めがあり、その後は立命館で今年最初の機関会議が設定されていた。そうして大阪から京都に移動する途上で、お世話になった方をお見舞するとと共に、今年もまたお世話になる方と昼食をいただくことにもした。そんなこともあって、少々、かしこまった服をまとうことにしよう、と思ったのだ。 

ただ、普段は比較的ラフな格好をさせていただいていることもあって、行く先々で「どうしたんですか?」と訪ねられた。立命館も、同志社も、本日から講義だったのだが、特に立命館では、サービスラーニングセンターに出入りしている、なじみのある学生からは、彼女が電話に応対している最中に部屋に入ったことも重なって、二度見ならぬ三度見をされたりもした。立命館と同志社で講義のはしごをして、夜には立命館災害復興支援室の集まりに出かけたのだが、そこでは「七五三のよう」と、気心が知れたゆえのあたたかいお迎えもいただいた。なかなか、TPOへの配慮は簡単ではない。 

翻ってみれば、ノマドワークなどが象徴するように、どこでも仕事の場とすることができるような環境がある今の時代、最早「晴れ着」や「余所行き」という感覚が次第に薄められているのかもしれない。ただ、そうして慌ただしく過ごす毎日においても、人は多くの場面にでくわしているはずである。さしずめ、今日の出で立ちは、自分にとっての今日が「ハレ」の日であると思っての行動だったのだが、転じてそれは、これから始まる「ケ」の日々においても、きちんと服装や態度に努めていこうという決意を固める機会になったのかもしれない。まず、そのためには、本日、久しぶりに袖を通したところ、首回りを締め付けたシャツ、高級ハムのように身体をくるんだベスト、自ずから背筋が伸びるジャケットとなってしまったことを大いに反省せねばなるまい。