仕事の仲間によれば「合宿をしよう」という人は、職場にはあまりいないらしい。勝手な想像だが、長い会議と思われているのかもしれない。しかし合宿は、フォーマル(定形)ではないもののオフィシャル(公式)に位置づけることによって、日常とは違った「人」と「なり」が見えてくるし、何よりも論点を集中させる場合や、あえて視野を広げて論点を拡散させることも可能である。この、インフォーマル(非定形)だが、決してアンオフィシャル(非公式)ではないという場の位置づけと、参加への動機づけができてこそ初めて、合宿は「単に集まって泊まり、長い会議がなされる」という観念から解放されることになろう。
というわけで、今年度から夏と春に行われている、立命館大学サービスラーニングセンターの学生コーディネーターの1泊2日の合宿に、教職員スタッフの一人として参加した。夏は3コマのレクチャーを行ったのだが、それはむしろ講義を受講して欲しい、というメッセージにかえて、「大喜利」の進行役と学生による「補い合う関係づくりのためのコンセンサス形成のワークショップ」へのコメンテーターというお役を担わせていただくことになった。大喜利は初日の朝に行われ、2時間にわたって自らの役割と周りのスタッフとの関わりについて「とんち」をきかせた問答を行うこととした。普段から「答える」ことには慣れているが、自分で問いをつくって「さげる(あるいは、落とす)」ことには慣れていないと見え、だいぶ苦戦をしていたもようであった。
後半のコメンテーターとしては、サービスラーニングセンターのウェブサイトでも提供させていただいている動画でも述べている「ツール・ロール・ルール」の3つの「ル」を基底として、グループとチームと組織の違いへの関心を促した。これまでグループは足し算でチームは掛け算ということを「相乗効果」や(スポーツ競技などの)「ポジション」といった観点から指摘してきたが、今回はそこに「組織は引き算と割り算」というアナロジーを持ち込むことにした。それは、大喜利を終えた後、川中大輔先生が進行役となり、半日にわたって2つのキャンパスの混成グループが「個々の長所と短所」を紐解いていくこととしたものの、サービスラーニングセンターという機関全体からみた個々の位置づけについて、ほとんどのスタッフが視点を持ち合わせていなかったためである。組織が引き算と割り算というのは、「因数分解」という思考から迫ったのだが、それなりに響く概念だったもようなので、今後、精緻に論じてみることとしよう。
こうして密なる議論を行った立命館大学サービスラーニングセンターの合宿だが、夏にびわこ・くさつキャンパスの「エポック立命21」で行ったこともあって、この春は衣笠キャンパスの「西園寺記念館」にある衣笠セミナーハウスで実施した。ところが、ここは食堂設備もなければ、住宅街の中の立地ということもあって、物音や話声による騒音問題に厳しい。そもそも、私にとっての衣笠セミナーハウスはアカデメイア立命21であり、当時は飲酒が可能であった「嵯峨野セミナーハウス」という選択肢もあった。それを思うと、俗世から離れて、とことん異空間を楽しみながら、飲酒やスペシャル料理などにより異文化に浸ることができる同志社びわこリトリートセンターは実に恵まれた施設であり、合宿などの拠点となると感じ入るところである。