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2017年5月7日日曜日

ホームパーティーに住み開きを思う

2009年度まで、應典院寺町倶楽部では築港ARC(アートリソースセンター)プロジェクトを展開していた。2006年の募集時は財団法人大阪都市協会による事業であったが、大阪市の機構改革により、2007年度からは同じく大阪市が所管する財団法人である大阪城ホールによる文化事業として位置づけられた。それまで、赤レンガ倉庫群を擁する築港エリアは2000年からレクチャー・展覧会・実験的な音楽プログラムなどによる大阪アーツアポリア事業が展開されていたが、大阪市役所の調整によって、新たな展開がなされることになった。それが2006年度からの「芸術系NPO支援・育成事業」であり、築港ARCもまた、かつての大阪市港湾局の庁舎「piaNPO」の2階を拠点に3年あまりの活動を展開した。

そして、築港ARCのチーフディレクター、アサダワタルくんが取りまとめ、2009年のアサヒ・アート・フェスティバルに参加したプログラムが「住み開きアートプロジェクト」である。住み開きという言葉に聴きなじみがない人も多いかもしれないが、特設ブログに公開された上掲のプロジェクトの報告書(ただし、2017年5月7日時点ではリンク切れ)の副題にもあるとおり、「自分だけの場所をみんなのためにちょっとだけひらく」ことだ。詳しくは、2012年1月には筑摩書房からアサダくんの単著として『住み開き:家から始めるコミュニティ』が刊行され、あわせてWikipediaにも「住み開き」の項目があるので、そちらを参照されたい。筑摩書房のサイトの表紙画像には帯のないものが用いられているが、緑色の帯に記された「家をちょっと開けば、他人とどんどん繋がれる。」が書籍情報の横に掲載されているので、その概念を理解する手助けとなろう。

2009年の住み開きアートプロジェクトでは、多彩な現場に足を運び、記録係を務めさせていただいたのだが、印象的な場の一つに、「ホームパーティー」の形式を借りて8月30日に行われたシンポジウムがある。前掲の特設ブログにもレポートが綴られているが、当日、話題提供をいただいた美術家の岩淵拓郎さんの発表スライドがご自身によりYouTubeで公開されている。岩淵さんのお話しで印象的だったのは、「御呼ばれ」と「パーティー」のあいだに開きがある、という点だった。前者は「もてなす/もてなされる」側に一線が引かれホストがゲストに飲食を振る舞うというもの、後者は両者の立場に分かれすぎずに飲食より会話が中心となる、と整理された。

今日はご近所のお宅でのホームパーティーにお邪魔した。先程の整理で言えば家に「御呼ばれ」なのだが、料理と飲み物を持ち寄ったという意味では先方のホームでの「パーティー」であった。最初はソファーで、カナッペやチーズとフルーツを、そしてテーブルに移ってワインなどと共にサラダやチキンやグラタンをいただきながら、会話を楽しんだ。気づけば5時間が経っていた。最早8年も前になる「住み開き」の一コマを、アウェイの地で、近くのお宅にお招きをいただいて想い起こす、なんとも意味深い1日となった。