岩手・大船渡で朝を迎えた。3月にもお邪魔したホテル福富さんの朝食は、ホテルと掲げられながらも良い意味でお宿の朝食という感じで好感を持っている。テレビでは8時の推定で中心気圧が975hPaという台風5号の接近により、四国・近畿・東海で記録的豪雨のおそれがあることが報じられていた。その後、メールをチェックすると、翌日からお伺いする「北海道高校生自然環境ミーティング」について、参加生徒たちの移動手段について案じた照会が届いていた。
前日に続き雨模様の大船渡だったが、チェックアウトの後、キャッセン大船渡の脇で三陸国際芸術祭のための作品を制作する井上信太さんを訪ねた。この9月に帰国予定というオランダから京都精華大学に1年間留学しに来たシュエッツさんの振る舞いについて、「コミュニケーションが全然できひんかったけど、こっちに来てから飯も炊けるようになったし、やっぱり現場はすごいわ」と仰っていたのが印象的だった。信太さんから「一緒に写真撮ろう」と誘っていただいたので喜んでお応えした。そして、デンマークで購入したチョコレートを2セット置き、知恵が文化を豊かにし、文化が人間関係を豊かにすると実感した現場を後にした。
そしてホテル福富にてお借りした洗濯物を引き取り、昨日お世話になった大先輩の水野さんのお宅にご挨拶に伺い、大船渡から気仙沼へと向かった。ちなみに大船渡の盛町では来年の5月の連休に天照御祖神社の五年祭が開催されるとのことであり、再訪へのお誘いをいただいた。一方で気仙沼には再訪を約束しながらなかなかお邪魔できなかったが、やっと訪れることができた。月曜日ということもあり、お休みの店がいくつかあったのが残念だったが、アンカーコーヒー・マザーポート店でランチをいただき、海の市シャークミュージアム、お魚いちば、そして唐桑半島ビジターセンター・津波体験館に立ち寄り、目的地である唐桑御殿つなかんへと向かった。
唐桑御殿つなかんは、立命館災害復興支援室により、東北ツリーハウス観光協会による4号「つなまる」をつくった場所である。お披露目されたのがちょうど2年前の8月7日、そしてその日は「あやこばあ」の初盆だったのだが、今日は「つなかん」の経営母体である盛屋水産の社長「やっさん」らの初盆だった(そして、やっさんの遺影は私が2014年8月22日にツリーハウス制作の際に学生たちと乗船体験をさせていただいたときに撮影したものであることがわかった)。底抜けに明るい女将の一代さんには、第一声になんとお声掛けすればいいのか、ささやかに戸惑いがあったのだが、ツリーハウス下のウッドデッキから、既に牡蠣剥きの道具などが取り払われて卓球台が置かれていた工場のあたりにいた一代さんに手を振ると「おかえりー」と、いつもの声で迎え入れてくれた。ツリーハウスを一緒につくった当時の災害復興支援室担当次長である廣井さんと、ツリーハウスの制作以前につなかんにお邪魔してきた森くん・西崎さんと共に訪れたが、岩手の久慈から嫁いできた一代さんが「理想の嫁」「自慢の母」になるべく人には言えない努力を重ねてこられたことに触れ、何かをするということは、よりよい未来を「目指す」ことばかりではなく、丁寧に今を「過ごす」ことも重要なのだと改めて痛感する、貴重な時間を過ごすことができた。