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2021年1月28日木曜日

まちの歴史に学びまちの歴史を刻む

私が立命館大学で担当している授業は、教室だけで学びの場が収まらない少し不思議なものが多い。通常、Science Ficitonの頭文字とされるSFを「SUKOSHI FUSHIGI」と銘打って、まんがの世界をこどもだけに留めずに、青年や大人にも拡張させていったように、教える/教わるという教育システムから、学ぶスタイルへとモードの転換が図られるよう、いくつか工夫を重ねてきている。その基軸となるのが、米国を中心に発展してきたサービス・ラーニングという教授法である。この10年ほど、集団において他者と関わり合う活動(サービス)を通して学び成長する(ラーニング)ことを、多様な現場において展開していく企画と運営を担ってきている。

今日は朝から、そうしたプログラムの一つ、時代祭応援プロジェクトにおける1年のフィードバックと継続実施を協議するミーティングが開催された。正確に言えば、シチズンシップ・スタディーズIのGAクラスを受講し、レポートを提出した学生のレポートを持参して、その内容の読み合わせをした上で、来年度に向けたあり方を検討した。科目自体は2005年に文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラムの採択を契機に「地域活性化ボランティア」という科目名で開設され、時代祭応援プロジェクトは当時スタッフをされていた方の発案のもと現場の方々の理解と協力を得て、現在まで継続されてきた息の長いプロジェクトである。2014年のみ役員体制の見直しによって一時中断したものの、長きにわたって安定的に開設されてきたプロジェクトではあるが、立命館大学の教養教育改革の反動で、2021年からは新たな形態で(具体的には、夏期休暇中の活動を授業に関連する学習時間から外し、秋セメスター内のみを授業内外の学習時間として位置づける)開講されることになったため、今日はそのための基本的な考え方を改めて確認し、実質的な活動時間が短くなる中でも質的な充実はいかにして可能かの意見交換を行った。

ミーティングを終えて家路に就こうとしたとき、近くにハマムラのロゴマークが掲げられていることに気づいた。恐らく京都ではよく知られたお店の一つで、私の世代であれば河原町三条下るにあったことを覚えている人は多いだろうし、その後2014年に府庁前に移転したお店を目にした人も一定数いるだろう。ちなみにハマムラは2つの系統に分かれているようで、みうらじゅんさんの「シンスブーム」になぞらえれば「since 1924」と記している「京の中華ハマムラ」は創業者の濱村保三さんのお孫さんにあたる弓倉和夫さんから弓倉多佳夫さんに事業承継がなされて京都駅八条口の近鉄名店街とイオンモールKYOTOに店舗を設け、府庁前の「京都中華ハマムラ」は濱村吉行さんが河原町店からの味を継承されているという。このハマムラさんのロゴマークは、京都新聞の「社名&ロゴ物語」で紹介された記事(G-Searchによると2015年1月25日の朝刊6頁)には「顔をデザインした大学生の案」とあったが、府庁前のお店のメニューでの説明書きが紹介された写真には「一般公募し立命館大学生が作った」とあって驚いた。

まちの歴史に学ぶことは多いのは当然のことであるが、学生がまちの歴史を刻むこともあるということを、このハマムラさんの顔のマークが気づかせてくれる。午後は立命館大学のZoomミーティングとウェビナーに相次いで参加したが、果たして現代の学生が、100年先の未来において残すことができるものは何か。そんな観点からも、大学とまちの関係について改めて考えてみたい。ちなみに、ミーティングとウェビナーのあいだに、新潟県小千谷市の塩谷集落の共同研究のメンバーでのZoomミーティングも行ったのだが、そこでは確実に新しい世代の到来を感じるところもあり、若くない自分を見つめる機会ともなった。


府庁前のお店ではSinceではなく創業大正十三年を用いているようで
(Leica M9-P, 35mm, f/9.5, 1/350, ISO400)