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2014年1月18日土曜日

場を共有し財を持ち寄るお祭り


大阪、天王寺区の北西の端にある應典院では、1月19日まで「コモンズフェスタ」が開催中だ。よって、今日はその「ラスト1日」である。スポーツであればブービー賞に位置づくものの、例えば祇園祭というお祭りであれば「山鉾巡行」の前の「宵山」のように、大盛り上がりの一日であった。実際、朝6時半から「鳩を放つ」、10時半から「外国僧と日本語で語る」、14時からは「臨済宗の典座さんから食作法を学ぶ」、19時からは「『まわしよみ新聞』をまわしよむ」、15時と19時は「ヨブ記」に着想を得た「演劇『よぶ』」の公演と、壮絶な編成がなされた。

さすがに早朝のプログラムは失礼させていただいたのだが、午前中から夜のプログラムまで、記録係を兼ねて参加した。應典院寺町倶楽部の事務局長という立場がありながら「参加」とはどういうことだ、と問われそうだが、この「フェスタ」は、実行委員の企画によって組み立てた、文字通りのお祭りである。実際、コモンズフェスタは「お寺でのアートとNPOの総合芸術文化祭」などと称している。よって、そうした多くの担い手によって生み出される場に、私も参加することが筋だと考えている。

とはいえ、立場がある以上、何かと前に出なければならない場面もある。ただ、特に今日のプログラムでは、それこそ「作務衣」で身をまとい、ただ作務をさせていただくこととした。ただ、カメラという道具を持ってスタッフとして参加していると、どうしても距離が生まれてしまうのが申し訳ない。例えば、午前中のプログラムでは参加者の一人から、スリランカ、台湾、中国(杭州)のお坊さんに「宗教教育において最も大切なものは?」などといった問いが投げかけられ、議論が盛り上がるのだが、そうした場面を収めるべく、一歩引いた視点から全体を見渡すことになるし、午後のプログラムでは「しょうがごはん、ピリ辛こんにゃく、白菜汁」といったお食事をいただきつつも、お汁の数が足りなくなった折には「一般」参加の方に行き届くように「スタッフ」が配慮していくことになる。

そもそも「commons」とは「共有地」という意味であるが、「common」と単数形になると「常識」という意味に(も)なる。抽象的な表現となるが、應典院再建翌年の1998年から始まった「コモンズフェスタ」は、最初から個人を単位にしない(お寺という)「共有地」でのお祭りが、お祭りを通じた「共有財」の創出の機会となる、という点において、何とも絶妙な名称だと感じてやまない。と同時に、そうしたお寺の本堂で「ヨブ記」における「正しい者が被る不幸」をテーマにしたお芝居がなされるなど、「参加者」として楽しまない手はない。その演劇の最中、昨年度のコモンズフェスタで生まれた「コモンズ」の一つである「まわしよみ新聞」を、この1年あまりのあいだに全国各地で実施され編集された200ほどをテーブルに載せて「まわしよむ」というコモンズのコモンズに触れられたことも、何とも言えない場所の力を体感する機会であったと思えてならない。