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2014年7月25日金曜日

再来のまちでの去り際の余韻

「ホームランを数えてるうちは四番にはなれない」。これは高校野球を題材に多角的な角度から人間関係を描いた漫画(などという仰々しいが)「タッチ」(あだち充)の中で出てくる台詞である。喫茶店によく置かれているサンデーコミックスなら23巻、私が揃えているワイド版であれば10巻に収められている「10割だよ」(全257話中227話)で描かれている。主人公(と言ってよいだろう)上杉達也(明青学園)との対戦に燃える相手高校(須見工)の新田明男が、後輩(5番の大熊)の問いかけに対して答えた言葉だ。

何かを狙っているわけではないのだが、岩手県宮古市に何回目になるかわからないがやってきた。前回お邪魔したのは7月12日の仮設集会所「ODENSE2」の感謝祭であり、そうして一つひとつを遡っていけば、通算何回目かは明らかになる。とはいえ、今回は立命館の業務モードではなく、改めて「今と人」に会うためにやってきた。旅のお伴は、インドネシアのジャワ島中部地震に伴う京都府国際課によるインドネシア・ジョグジャカルタへの支援でご一緒させていただいている香老舗・松栄堂の方々と、應典院のスタッフ、合計4名である。

朝6時に家を出て、8時15分の飛行機に乗って、田老の防潮堤に着いたのはほぼ16時であった。こうして改めて時間を記すと、関西からの距離を痛感させられるのだが、そうした距離があっても、あるいはそれだけの距離があるからこそ、足を運ぶことに意味がある。ふと、映画にもなった森山未來さんと佐藤江梨子さんらによる『その街のこども』の有名な台詞に「行かなだめなんです」を想い起こす。何度か宮古に足を運んできた者としては、この「それでも」行くということ、さらには何かをするのではなく、そこにいることが大切となることを、足を運ぶごとに実感してきた。

宮古では、宮古観光協会による「学ぶ防災」のガイド(今回は鈴木重男さんで、2012年の夏に仮設住宅での支援活動でご縁をいただいて以来、をお願いして防潮堤や嵩上げの工事が進んでいる今・現在の田老についてお話を伺い、その後は夕暮れの浄土ヶ浜を散策した。夜は浄土ヶ浜旅館・海舟で夕食を取り、宮古セントラルイン・熊安の隣にある土蔵を改装したカフェバーHAMACAにてマスターのセンスで出されるお酒を楽しんだ。はからずも、明日には宮古の夏祭りが開催されるようで、宮古市中央通商店街振興組合が協賛するビアガーデンにて振る舞われる「たこ焼き」の予行演習のため、山田高校の生徒2名がHAMACAにて鉄板と格闘していた。関西からやってきた我々の血が騒いでしまい、横から茶々を入れ、これでまた一つ宮古への思いが深まったと感じつつ眠りにつくのであった。(蛇足だが、『タッチ』の作者、あだち充さんが登場人物の現場の立ち去り方を特徴的に描くことを「あだち去」として着目した方がおられるのだが、まさに今日はそんな感じでカフェバーを去っていったような気がしてならない。)

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