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2021年2月26日金曜日

行列ができていない事態

1月7日に東京都などに出された緊急事態宣言は、その後対象を広げ、3月7日まで延長とされた。そして今月末には一部を除いて先行して解除がなされると報じられた。今年の2月は28日までしかないため、3月7日に比べれば6府県には1週間の前倒しとなる。2月26日の段階で、3日後から平常状態に戻ります、ということを意味するのだが、毎度の事ながら夕方に、しかも金曜日の夕方において月曜日からは平常どおりに、という判断を伝えるのは、現場感覚の欠如のように思えてならない。

立川志の輔師匠の新作落語に「質屋暦」というものがある。それまでの太陰太陽暦をやめ、1873年から太陽暦を導入することを決断した太政官の「改暦ノ布告」にまつわる噺である。明治5年12月2日の翌日を明治6年1月1日にすれば、1ヶ月分の給与を支払わなくて済むこと、さらには太陰太陽暦のままだと明治6年には閏月を入れねばならないため1ヶ月分の給与がかかること、したがってこのタイミングで暦を変えれば2ヶ月分の給与を払わなくて済むことになるため政府の財政が圧縮できる、ということを手がかりとして、町人の質出しの場面を滑稽に描き出す作品に仕上げられた。2013年の「志の輔らくご in PARCO」での公演がWOWOWで放送されていることは確認できているものの、あいにくDVD等でソフト化されていないのが残念なのだが、そのマクラの部分でも触れられている先述の布告は11月9日、つまり23日後に暦が変わる、と宣言されたことになる。

緊急事態宣言と改暦とを重ねて考えるのはいささか乱暴かもしれないが、仮にこうした政府決定と東京オリンピック・パラリンピックとを関連づけてみたとき、どんな決定であっても、現場に及ぶ影響は相当なものとなるだろう。何より「1年の延期」の決定から日が経つにつれ、ワクチン・治療法などにまつわる状況はより複雑化している。したがって、先送りを重ねた上で、ある時に「苦渋の決断」という具合に枕詞を付して何らかの発表をしたとしても納得がいかない、という声が噴出するのは想像に難くない。もちろん、決断に至るまでに丁寧な判断が求められるのは、私が関連するところでは大学の対面授業に関するあり方も例外ではなく、まずは緊急事態宣言の解除にどう向き合うか、そして政府決定に依存するだけでなく、大学としての理念や方針をどう定めていくのか、執行部には相当の熟慮が求められるだろう。

そんななか、今日は浜松まで新幹線で出かけた。浜松市による補助金事業のアドバイスのため、浜松アーツ&クリエイションのお仕事としての訪問である。当初の予定では実家に宿泊する予定であったが、家族であっても他県に居住する者との接触によって病院への立ち入りに支障がもたらされることが懸念されたため、「今回は来ない方が助かる」と言われ、結果として声だけのやりとりに止まった。無事に仕事を終え、ふと思い立って普段は行列が絶えない駅近くのお店に足を運ぶと待ち時間なしで入店でき、緊急事態宣言下という非日常ゆえの展開で想定外の時間を過ごす日となった。

静岡県西部で18年間過ごしたものの「浜松餃子」のブランディングの奏功には目を見張ります
(Leica M9-P, 35mm, f/2.4, 1/30, ISO 400)