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2017年8月25日金曜日

ずらしとゆさぶりのはじまり

国際総合防災学会IDRiM2017)3日目の今日はポスター発表が当てられていた。既にポスターは初日に掲出してあり、出会う人には縮刷版をお渡ししてきた。とはいえ、A0版をA4にしているため、読めない箇所もある。だからこそ、「見に来てね」と「ちょっとだけ説明させてください」の両面から、実践的研究への関心を惹きつけられると合理化して渡してきた。

ポスターセッションは午前中3つめのプログラムだったため、基調講演(警戒情報の伝達遅延がもたらす影響、データジャーナリズムの2本立て)と大学院生セッションと渡り歩いて会場に行くと、既にポスターの前では前学会長の岡田憲夫先生が共同発表者の堀江尚子さんに熱く語ってくださっていた。今回の発表は2017年2月のイオンモール草津での「お買いものdeぼうさい」の内容について、社会心理学の観点から防災訓練のあり方としての特徴に接近したものだが、岡田先生は「参加者(partcipant)」という表現にひっかかりを持たれたようである。要約すれば、参加者には能動的な参加者も受動的な参加者もいるため、initiative takerやresidentといった言葉を用いる、交える、その方が専門家の関わりが必要とされる場面もあるという説明には適切ではないか、といった助言を得た。



また、元カリフォルニア州危機管理局の統括責任者で、平成28年熊本地震の際には京都大学防災研究所の客員教授をされていたJames Goltz(ジム・ゴルツ)さんには「Informative Endorsement」という表現により、何らかの行動について意味創出をしながら相互承認していく好例であると評価をいただいた。加えて、京都大学防災研究所の多々納裕一先生からは、所属や立場の如何よりもIntermediator(交渉人・仲介者・媒介役)として振る舞うことのできる役割が参加型の防災では大切となると、仕掛け人である我々の振る舞いを再定義してくださった。さらに、今回の取り組みが備蓄品の購入を促しながらも日用品を生かす「道具箱」となっていることに関心が向けられた。

学会は口頭であってもポスターであっても、大会で発表して終わりではない。大会での発表内容に対するこれらのコメント等をもとに文字にしていく過程に入る。加えて、多々納先生には避難生活中における「流通」のシミュレーションも行えるのではないか、といった実践面での展開可能性にも触れていただいた。学会誌への投稿は11月が締切、そして実践は学外研究の帰国後となるため、ここには挙げなかった多くの方々の来訪・関心・助言に感謝しつつ、研究と実践の両面で、今日から徐々に「ずらし」と「ゆさぶり」のための仕込みを始めていくことにしよう。