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2007年2月10日土曜日

生活防災のすすめ

 インドネシアのジョクジャカルタに出張することになった。京都府によるジョクジャカルタ特別区との「テキスタイル技術協力事業」の推進について、現地を訪問し、調査報告をして欲しい、というものである。当初は2月の予定であったが、先方、王室の都合で延期となっていた。中止やも、という話も出たが、結果として日程変更がなされることとなった。

 10月から、月1回程度集まっているのだが、そこでは西陣織と王室バティックなどのコラボレーションの有り様について語り合っている。研究会という形態を取っており、帯ときものを中心に、ジュエリーやバッグ、アクセサリー等をプロデュースして発信する専門商社の社長さんが委員長で、私は副委員長をさせていただいている。その他、織屋さん、百貨店のバイヤーの方、ウェブ制作等のコンサルティング会社の方、インドネシアからの留学生、そして京都府の職員の方々という構成である。こうした動きに関わらせていただくことになったのも、同志社大学で仕事をさせていただくことになったためである。産官学地域連携に取り組む「リエゾンオフィス」の方からお声掛けをいただいて、プロジェクトに参加させていただくことになった。

 とりわけ、私に課された役割は、国際的な技術交流を行っていく上で、「防災」や「生活者の視点」についてどのように盛り込んでいくべきか、天の邪鬼な視点を持ち込むことだと認識している。というのも、インドネシアは津波の被害に逢っているためである。今回、京都府が積極的に取り組んでいる技術交流は、20年間にわたる友好協定を維持、発展させていく具体策であるのと同時に、より実践的で実効的な復興への支援という目的も重ねられている。ただ、研究会の回を重ねるごとに、「キャッチコピー」や「チラシのデザイン」をする役割も担うこともあり、嫌な思いはしていないまでも、やや便利遣いモードになっていると言えよう。

 今日は10月から数えて5回目の研究会で、3月に開催予定の「試作品展示会」の企画検討が行われた。目玉は、インドネシアの地域資源とも言える「香木」を手がかりにした、お香とバティック織等のコラボレーションだ。匂い袋などが彩りを添えることになるだろう。ちなみに私がこうした取り組みに持ち込んだ「ネタ」は、「防災」と「減災」ということばに見る理論的観点と、展示会にちなんで名付けたプロジェクト名称「てこらぼ」であるので、興味のある方には3月21日から22日、新風館3階のトランスジャンルでの企画に足を運んでご確認いただければ、と思う。





<生活防災>のすすめ:防災心理学研究ノート

1 <生活防災のすすめ>

3.<生活防災>とは何か(抜粋)




 防災が、生活全体の中に他の諸領域とともに混融しているのだとすれば、防災(あるいは、その中の特定の側面)だけを抽出し、その最適化を図ることは現実的ではない。生活まるごとにおける防災、言い換えれば、他の諸領域と引き離さない防災をこそ追求すべきである。本書では、以下、こうした防災のことを、<生活防災>と呼ぶことにしよう。

 実は、<生活防災>は、部分的にではあるが、何人かの先駆者たちによってすでに実践に移され一定の成果を生み出しつつある。そのきっかけとなったのが、空前の都市型災害となった阪神・淡路大震災(1995年)である。この未曾有の大震災によって、<最適化防災>(のみ)に依存することの危険性がはっきりと露呈したのである。すなわち、地震予知、建造物の耐震化、ライフラインの整備、情報伝達システムの強化−どれも非常に大切なことではあるが、いずれも単体としては明らかに力不足であった。そして、より重要な事実として、多くの人が、たとえ将来、それぞれの側面が単体として<最適化>されたとしてもけっして十分ではないだろうという直感を得た。むしろ、震災の重要な教訓として得られたのは「コミュニティの重要性」、「助け合いの必要性」、「普段の意識、準備の大切さ」といった、ある意味でとらえどころのない茫洋とした事項群であった。これらこそ、生活全体の中に浸透・混融した防災、すなわち、<生活防災>が目指すところにほかならない。



矢守(2005) pp.3-5





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