1泊2日で、立命館大学サービスラーニングセンターの学生スタッフ「学生コーディネーター」の合宿に参加している。合宿は年に2回、開催され、2つのキャンパスのあいだで、交互に会場が設定されている。2015年の予定とされている「大阪いばらきキャンパス」が開学したらどうなるのか、それはそれで、難しい問題だ。ともあれ、今回はびわこ・くさつキャンパスの「エポック立命21」での開催である。
基本的に、学生による活動は学生による自治がきいていることが望ましいと考えているで、企画の詳細には立ち入らないようにしてきているが、詰めの甘さがどうしても気になってしまう。特に「これでいいんじゃね?」という流れになったときは、なかなか黙っていられない。原研哉さんの『デザインのデザイン』からの受け売りだが、「それでいい」というときの「で」が、投げやりの「それで落ちつける」なのか、納得した上での「それで落ちついた」のか、問いかけずにはいられないのだ。すなわち、合点がいった「それで」に収まるまでには、いくつもの「これが」「あれが」が浮上して、文字通り「が」が張られ、やがて強烈な自己主張が共同主観へと収斂されているはずである。
立命館大学サービスラーニングセンターが設置された背景には、1999年度に産業社会学部によって開講された「ボランティアコーディネーター養成プログラム(Volunteer Coordinator Trainig Program:VCTP)」がある。誰かと誰か、大学と社会、人と活動、そうした2種類以上の要素をつなぐ存在として、代のため人のために動く立場への実践的な学習を経て、学習した知を実践する機会として、学内のボランティアセンターでの学生スタッフとなる、そうした流れがあった。VCTPは、社会人と共に学ぶ、10単位のパッケージ科目という、他に類のない正課科目群であったが、残念ながら、2012年度をもって終了した。そのため、時にボランティアコーディネーターながら、ボランティア経験が浅い、というスタッフが、徐々に増えてきている。
「野球をしない野球解説者」という例え話で、現場を知ることの大事さを語っていた時期があるのだが、今回の合宿では顕在的・潜在的の如何を問わず、課題から問題を抽出し、解決のための行動計画を策定する、という内容が盛り込まれていたため、新しいアナロジーとして「バイヤーとクラークとソムリエ」で説明していくことにする。要は、どのようなボランティア情報を獲得するのか(商品の売り手であるバイヤーの姿勢)上では、どのようにボランティア情報を提供するのか(商品の買い手へのクラークの姿勢)だけでなく、「自分はどのようなものを獲得し、提供される側は何を求めているのか」を見極める(実際に味わっていて特徴の表現がか可能なソムリエの姿勢)が大事だ、ということである。端的に言えば、実際に活動せず(ワインで言えば、呑まずに)、周囲の情報(産地、原料、仕込み方、売れ筋、値段などのスペック)だけで判断していては、求める相手に選択や判断をあおることはできないだろう、ということである。逆に言えば、ボランティアの活動をせずにコーディネートに努める姿勢に対して、お酒が得意かどうかにかかわらず、年代の違いや、ワイナリーの違いなどを、実際に口に含んで確かめているソムリエの有り様から学びがあると思われるのだが、果たして、この話、伝わるかどうか、まずは学生たちに「テイスティング」を促してみることにしよう。