2020年度春学期と異なって、秋学期は一部対面の授業があった。しかし、既に下宿を引き払っている学生、遠距離通学のために通学の経路のどこかで感染するリスクを懸念する学生、再入国までに一定の時間を必要とした留学生、そうして対面の場に参加が困難な受講生がいた。そこで授業担当者の判断として、オンラインでの参加も選択肢に入れることにした。ハイブリッド授業などと一括りにされることがあるものの、対面で参加する受講生とオンラインでのライブ授業に参加する受講生との対話をもとにした授業はハイフレックス型授業と呼ばれている。
コロナ禍に際して「学びを止めるな」といったスローガンが広がったこともあって、学生の受講機会の保障は大学の執行部も大きなテーマとして特に配慮を重ねてきた観点の一つである。音を楽しむと書いて音楽と読むことと無関係ではないと思うのだが、音楽もまたライブ会場で聴くのと、ラジオで生放送を聴くのと、録音を聴くのとでは、体験の質が異なるだろう。もちろん、それぞれに絶対的な優劣があるわけではなく、それぞれの方法で最善かつ最高の体験ができるように、ミュージシャンやスタッフが工夫を重ねて作品を仕上げていることが重要である。転じて、授業もまた、多くの人の手によって、少なくとも最善なものとなるよう努力が重ねられている。
コロナ禍を経てオンライン授業が常態化することになり、私は授業設計と運営をレストランに見立てることが多かった。教員をシェフとすると、授業は料理となる。対面授業はレストランの来店者への調理、オンラインのライブ授業はテイクアウトのデリバリー、そしてオンラインのオンデマンド授業は冷凍食品の提供、という具合である。そんな区別を重ねながら、より深い学びへの工夫を重ねてきたつもりだが、果たしてどう味わってもらえたか、成績評価は授業担当者の内省を通じた自己評価の機会であもる。
0 件のコメント:
コメントを投稿