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2021年2月20日土曜日

線でつながる・ルームでつながる

半年ほどかけて準備を重ねて来た大学コンソーシアム京都第26回FDフォーラムの幕があがった。第25回は開催直前に新型コロナウイルス感染拡大防止のため、事前配布資料の公開のみで、実際の企画は中止となった。それから1年を経た第26回は初のオンラインでの開催となった。ちなみに来年の第27回もオンライン開催の方針で準備を重ねることが、先日、2月9日に開催された2020年度第5回FDフォーラム企画検討委員会にて議決された。

FDはFaculty Developmentの略語で、教授能力の開発を意味する。教授という職種の人の能力を開発する、という意味に止まらず、広く大学関係者の研修会として捉えるのが自然な解釈だろう。実際、その定義は議論の対象となっており、例えば文部科学省の中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像」答申(2005年1月)では「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。その意味するところは極めて広範にわたるが、具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などを挙げることができる。」とある。そもそもFacultyとは個々の教員ではなく教員団として、つまりは集団を指すのであり、ちょうどサンガ(saṃgha)が「お坊さんたち」を指す構図に似ているように捉えている。

昨年度も立命館大学から企画検討委員として参加させていただき、今年もまたその役を担わせていただくにあたり、シンポジウム「大学の教育・研究・社会貢献に新しいモデルは生まれうるか?〜COVID-19の経験を踏まえてAI化・ロボット化した世界の担い手を構想する〜」を提案、コーディネートする機会を得た。コロナ禍において、2020年3月に立ち上がったFacebookの「新型コロナのインパクトを受け、大学教員は何をすべきか、何をしたいかについて知恵と情報を共有するグループ」の創設管理人の岡本仁宏先生(関西学院大学)と、2020年1月に『ROBOT-PROOF:AI時代の大学教育』(森北出版)を訳したお一人である杉森公一先生(金沢大学)と共に、約2万1千人の参加者の投稿を通じて、どんな未来像を展望することができたかを語り合うことにした。2時間のシンポジウムの前半は事前提供資料をもとに、お二人の話題提供に、後半は469名に申込みをいただいた参加者(最大時に400名)から随時受け付けたQ&Aの内容を紐解いていくことにした。18ほど寄せられた問いの中で、私にとって最も印象的だった問いは「本当に元に戻らず変われるのでしょうか?」であった。

ちなみに私の事前提供資料では、最後に岩見夏希さんによる詩「ない」を紹介した。この詩は現在、仙台市教育委員会による「仙台版防災教育副読本『3.11から未来へ』」の小学校4,5,6年向けにおいて「希望の詩」として紹介されているが、私が最初に目にしたのはNPO法人アートNPOリンクによって展開された「アートNPOエイド」で藤井光さんが現地で撮影した写真(宮城県亘理郡山元町役場にて2011年4月23日撮影)であった。まもなく東日本大震災から10年だが、あの時に「そこにあった/ものをとりもどす/ために/がんばっている/ぼくたちには/まえとはちがうが/必ずいいものが/帰ってくるだろう」と力強く言葉が紡がれたことを思えば、コロナ禍の前に「そこにあった」もの、例えば対面授業の本質は何かを、丁寧に見つめ直さねばならない。それはシンポジウムでの議論のみに止まることなく、通常は懇親会として捉えられる「情報交換会」もまたオンライン開催したことによって、同じ関心を持つ人どうしでつながりあい、Zoomのブレイクアウトルームでのセッションで対話を深めたことにより、今後もさらに深く掘り下げられていくことだろう。

いつもより万全の環境で運営しようと久々に無線ではなく有線でインターネット接続を
(Nikon D40, Micro 40mm, f/3, 1/20, ISO400)

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