台湾・淡江大学と立命館大学との学術交流プログラム「TRACE2013」も7日目を迎え、いよいよ「クロージングダイアログ」が開催される日になった。4日のオープニングレクチャー以来、どのような学びを重ねてきたのかを振り返り、今後に向けての誓いを立てる、そんな場を設けたのである。会場は2013年1月に、全国アートNPOフォーラムin東北の会場となった、ほっぷの森Aiホールである。その名は、障害のある人の就労支援に取り組む「ほっぷの森」と、バリアフリーのアートプロジェクトを展開する「アート・インクルージョン」と、両団体に由来するところであり、明るい壁と整った音響設備が、充実した議論を行うのに最適だろうと、無理を言って使わせていただいたのだ。
3月に淡江大学で開催されたフォーラムに端を発した今回のフォーラムゆえ、私は企画段階から携わってきたが、常に選択肢を広げる立場を貫き、むしろ決して意思決定を主導しないよう努めてきた。ややもすると、それが一部のメンバーにとっては「わかりにくい」、「面倒くさい」といった印象を与えたかもしれない。しかし、選ぶことよりも選び抜くことが難しく、選び抜くことよりも考え抜くことが難しく、考え抜くことよりも(ただ)感じることが大切なときがある、そうしたことが実感されるためには、必要な姿勢であると、阪神・淡路大震災の経験から感じ、東日本大震災においても考えてきた。しかし、まったく干渉をしない放任型ではなく、必要に応じて干渉する信任型のため、時と場と機会によっては、唐突に干渉されたと小さな反発や反動を受けとめなければならないときがある。
今回のフォーラムでは、その学びの質を維持、発展させていくため、5日のプログラム以降、学生たちが用意してきた「振り返り用のツール(ジャーナルと呼ばれていた)」に加えて、1日ずつA4版の白紙1枚をつかって、「印象に残った言葉」と「印象に残った風景」を遺していくこととした。振り返りというと軽く感じる人たちがいるかもしれないが、サービスラーニングという教育手法において「reflection」とは、「reciprocity」(互恵)と並んで、鍵とされる概念である。今日は、そうして5日から1日ずつ、1枚の紙に2つの要素がまとめられた紙が、かつて卓球台として使われてきた木のボードに、5行(8月5日から9日まで)16列(16人分)で掲げられ、それぞれの振り返りシートを鏡のようにして、自らの感覚とを対峙させていった。
今日はクロージングダイアログの名のとおり、学術交流のフォーラム(すなわち、場)を閉じるにあたり、上述のとおり、リフレクションシートの共有を、日々の写真から作成したスライドショーとあわせて行った後、活動を通じて得た思いを小グループに分かれて共有する「シェアリング」、復興に向けて今何ができるかの「グループ・ディスカッション」、復興に向けて今何ができるかの「個人総括」を行った後、立命館災害復興支援室の担当部長である今村正治さんと、アート・インクルージョンの理事である村上タカシさんからコメントをいただいた。今村部長からは、「伊勢神宮の式年遷宮」を引き合いに出し、永遠に残すことを前提にせずに何かをつくる営みの尊さを思う反面で、永遠に耐えられるものをつくろうとする営みの愚かさを憂う、良い意味での批判的な側面が盛り込まれたのに対し、村上さんは被災後の仙台を見つめ、仙台に関わってきた者の実感として、復興の営みとは「短距離走でも、マラソンでもなく、駅伝のようなもの」な気がすると語った。ダイアログ終了後は、せんだい・みやぎNPOセンターの紅邑晶子さんに紹介いただいた野菜中心のレストラン「パンフレーテ」さんでフェアウェルパーティーとなったのだが、そこで盛り込まれた数々のサプライズに、参加学生らが何らかのたすきを受け取って、次の世代、別の場所へと一歩を踏み出していったのだろうと確信しつつ、心地よい酔いに包まれる仙台の夜であった。
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