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2015年4月25日土曜日

年の区切り

JR福知山線脱線事故から10年が経った。あの日、私は大阪医専で「人間関係論」の非常勤講師として出講していた。パソコンに保存されている当日のレジュメを見てみると、当日のテーマは「人間関係概論:人間関係とは個人の心の問題ではないことを理解する」であった。やがて看護師になっていく学生たちを対象に、医学をはじめとして人間の生理的構造を扱うのは自然科学、集団、組織、社会など集合体の全体的性質を取り扱うのが人間科学、という、かなり観念的なことをひもとく回であったが、講義の最初に事故の話に触れて始めたことをよく覚えている。

自然科学と人間科学の違いは心臓の科学と心の科学、という具合に区別ができる。心臓の科学には正解があるが、心の科学には複数の最適解が存在する。そこで、当日は村田朋泰さんがクレイアニメで仕上げたMr.Children「HERO」のプロモーションビデオを見ることにした。世界に広がる意味は、それぞれの「見え方」と「振る舞い」によって形作られていくことを実感して欲しいとの思いからであった。

あれから10年、今日は大阪の金蘭会高等学校で開催された、High school Play Festivalの参加校顔合わせ会に参列させていただいた。HPFは1990年、梅田にあった「スペースゼロ」主宰者の提案で始まった演劇祭である。スペースゼロの閉鎖に伴い、2001年度には実行委員会形式での開催に移行された。開催会場を探っていると耳にした当時の應典院事務局長により、高校生たちが切磋琢磨する演劇祭の趣旨に賛同し、シアトリカル應典院も開催会場の一つとされた。そして2006年の應典院主幹への着任以来、夏の風物詩とされた高校演劇祭の第1回会議にて、協力劇場の立場からの挨拶を担わせていただいてきた。

今日の挨拶では、やはりJR福知山線脱線事故の話に触れた。まず、10年目の今日だけ、4月25日だけ、あの事故のことを想い起こすのではなく、日々、その悲しみに向き合っている方々がいる、そこに思いを馳せて欲しい、と伝えた。なぜ、そんなことが伝えられるのかと、唐突感を抱いた学生たちもあったかもしれない。しかし、演劇もまた公演当日だけが大事ではないと理解できるであろう生徒の皆さんだからこそ、本堂を劇場として提供している側の代表として伝えたかったのである。


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