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2014年1月21日火曜日

振り返りを語ることで振り返る


肌寒い一日だった。雪こそ降らないまでも、車のフロントガラスに薄い氷が張るような朝、妻を職場へ見送って、私も職場へと向かった。タイムカードがない仕事だが、朝一番からオフィスというのも、やはり身が締まる。そんな一日の終わりには、学内の研究会だが公開で開催される「教学実践フォーラム」が待ち構えている。今日は全学補講日ということもあって2人しか乗車しなかった午後のシャトルバスに乗ってメイン会場、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)へと向かった。

今回出講させていただいたフォーラムのテーマは「Deepening Reflection〜現場から学ぶ学生の「ふりかえり」をどう深めるか」であり、昨年10月に行われた私大連盟での座談会「サービス・ラーニングの学びが学生にもたらすもの」(『大学時報』2013年11月号に所収)にも通じる話であった。ちょうど、前日の「ボランティア・サービスラーニング研究会」において、筑波大学の唐木清志先生が、日本の教育評価は「思考・判断・表現」、「技能」、「知識・理解」、「関心・意欲・態度」、と4つの観点別評価がなされているが、米国でのサービスラーニングにおいても、日本における4つ観点のそれぞれが、順に「探求と批判的思考」、「コミュニケーション」、「人間経験の多様性」、「倫理と社会的表現」に対応する、と紹介された。そうした議論を得ていたこともあり、既にレジュメは1週間ほど前に提出させていただいたものの、一夜漬けの試験勉強を終えたかのごとく、意気揚々と出向かせていただいた。ちなみに、私一人ではなく、私の発表には草津市での「草津街あかり・華あかり・夢あかり」のプロジェクトの受講生から2名、そして私の発表の前には金井萬造先生(経済学部)のゼミが、また2つの発表に対するコメントをサービスラーニングセンター長でもある坂田謙司先生(産業社会学部)が行った。

メイン会場がBKCということはサブ会場もあり、朱雀キャンパスと衣笠キャンパスと3拠点がIP通信によるテレビ会議システムで接続された。フォーラムでは冒頭に教育開発推進機構の河井亨先生から、「講義型ではなく経験学習型の取り組みにおいて、学習者が経験からの学びのために、どのような振り返りを教員は促し、どんな点に注意をし、なぜその点を意識したのかを深めたい」と趣旨が語られた。それらを受け、「着地型観光」をテーマとする金井ゼミからは、ゼミ長がまず発表し、まずは現場に出て講義を受ける、そして講義以外での交流機会を持つ、それが情報共有を容易なものにし、信頼関係の構築に功を奏していることが触れられた。そうした生の声に続き、金井先生から、長らくアルパックという現場で仕事を重ねてきた経験を大学に持ち込む上で工夫してきたこととして、文化・経済・まちづくりという観光が持つ3つの要素に引きつけて深い思考を促しているということ、またその際に一級のものを見せて評価の基準を定めていること、それは「なぜ」と問う心を養って欲しいため、と説明がなされた。

通常はスライドを作り、それを効果的に使って話をする私だが、今回はテレビ会議システムを使用するとあって、さしずめラジオ番組のような語りで進めることにした。まず、ライブ感を演出するが如く、金井ゼミとサービスラーニングセンターでの取り組みの共通点(現場での集団による学びで、評価観点を教員が提示し、低い到達点で満足しないよう精緻な洞察を促していること)と相違点(ゼミが同質的な学びのコミュニティであるのに対してサービスラーニングでは学部や回生が多様であること、また現場からの要請が受講ガイドに掲載された上で学生がプロジェクトを選択していること、そして教育評価においては成績評定よりも学習効果を重視していること[細かく言えばGPA評定ではなくP/F評定であること])を挙げ、レジュメと資料に基づいて、学生へのインタビューを盛り込み、30分の「生放送」(さしずめトークライブ)を行った。学生からは「進めていくうちに自己完結してしまい、プロジェクトがどういう理念だったのかを見失ないように、目標に沿って動いているかを確かめることができた」、といった声や、「いろんな違いがある中で、自分の役割を見いだすのに立ち止まって見つめる機会が必要だった」などと語られた。コメントでは「数値で示しにくい経験学習は客観的に評価できるのか」と「実践を盛り込んだ学習におけるリスクマネジメントはどうしているのか」などが寄せられたが、「自己評価と第三者評価と相互評価が一致するよう、物事・出来事へのまなざしの精度を上げること」と「責任感や正義感、使命感で始まった活動が義務感や強制に変化させないために、まずは学生から現場の方々に頼ることが大事」であることをテニスの比喩を用いて語ったのだが、実は今日のフォーラムに参加したことが、この間の学びの最大の振り返りになった、と打ち上げの席で学生が語っており、やはり「問われる場に身を置く」ことで「言語化」する機会をつくることが大切なのだ、と、私もまた振り返りを通じて振り返ることができた一日であった。

 

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