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2018年3月2日金曜日

それもまた真なり

3日間の研究会「FWSP」を終え、今日は東へと向かっている。3日間の議論を想い起こしつつの移動である。例えば、UCLAのJoseph J. Tobin先生が『Preschool in Three Cultures』で示した、日本と中国と米国と3ヶ国の幼稚園の映像を3ヶ国それぞれの研究者が鑑賞して語り合うという「マルチボーカル・ヴィジュアル・エスノグラフィー」という方法論について、である。そうした方法論だけでなく、例えばサトウタツヤ先生が(神経心理学の観点から)「人間の活動は因果律ではなく、広がりと終息によるとElizabeth K. Warringtonが示した」とサラリと仰った一言などが、自らの不勉強さに内省を求めてくる。

サトウ先生が長らくテーマにしてこられたのは「うわさ」である。1月22日から23日には熊本でフィールドワークを行い、太政官によって発布されたという「万歳三唱令」の創作グループにインタビューを行った。福島大学に在職中(立命館大学に着任されたのは2001年4月)から「万歳三唱令」を疑ってきた中で、2017年12月26日、熊本日日新聞が「ニセの万歳三唱令は「酒席の一発芸」/熊日本社に匿名〝告白〟」とい記事を報じた。そして先述のフィールドワークの後、「万歳三唱令は「熊本発」/原形89年ごろ、健軍から九州、全国に」の記事が掲載される運びとなった。

今回のFWSPでは、サトウ先生のミニレクチャーとワークショップにて、この「本当らしい嘘」に触れ、3日目の発表が「秘密と嘘」の話題で終わった。学生時代、大平健さんの『やさしさの精神病理』を通して、「やさしくないやさしさ」や「やさしい嘘」に関心を向けたことを思い出した。サトウ先生の言葉を借りるなら、虚偽自白の元を辿る意味は、ウソだとしてもすごい想像力に触れることだ、とのことである。

東へと足を伸ばした先は、東京・茗荷谷の筑波大学東京キャンパスであった。明日からの国際ボランティア学会第19回大会に先立って開催された理事会に出席するためである。今期は研究委員会に所属しているため、桑名恵委員長(近畿大学)のもと、今年度の活動報告と来年度の活動計画について、少しだけ意見を重ねさせていただいた。「嘘から出た実」ならぬ「有言実行」として、充実した研究活動にあたっていきたい。


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