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2023年1月8日日曜日

「自分で律するという思想を基盤に」

「言われなくてもする、言われてもしない」。これは幾度となく耳や目にしてきた、現場のボランティアの活動に共通する理念について、端的に示した表現の一つである。言葉の主は草地賢一さんで、2000年1月に急逝された。阪神・淡路大震災での現地でのボランティア活動に関する連絡会議の場に参加した際、同じ会場に身を置いたことがあったように思われるものの、少なくとも私の名前を呼んでいただいた記憶はない。

深い関わりを重ねることはなかったものの、例えば渥美公秀先生や村井雅清さんなどから、草地賢一さんのお名前のみならず、その振る舞いについては何度も伺ってきた。実際、冒頭の「言われなくてもする、言われてもしない」は、村井さんが東日本大震災直後に緊急出版された「災害ボランティアの心構え」でも、マニュアルを整備して現場の秩序を保とうとする姿勢を批判し、そうした管理者の動向を否定的に捉える上で、草地さんのこの言葉が効果的に紹介されている。私の解釈も交えるなら、草地さんが示すボランティア活動の理念は、ボランティアの自発性が尊重されるためには、ボランティア側もまた、「したいこと」や「すべきこと」をすることが重要である、とことである。

年末から精力的に取り組んでいるのが、国際ボランティア学会の学会誌「ボランティア学研究」に寄稿させていただく原稿である。そのうちの一つに、草地さんが遺されたこの言葉を紐解くことにした。助けとなったのが、2001年に刊行された『阪神大震災と国際ボランティア論』という書籍で、副題「草地賢一が歩んだ道」からも想像ができるとおり、お仲間な方々によって組織された「『草地さんの仕事』刊行委員会」により編纂された一冊である。それとあわせて、いくつかの文献に目を向けてきたために、年を越してしまうことになってしまった。

刊行から20年あまりが経過した今、改めて「草地賢一が歩んだ道」を文字で辿らせていただいたところ、冒頭の言葉「言われなくてもする、言われてもしない」という言葉の背景を理解することができた。中でも、書籍の冒頭に収められた1999年6月16日の茨城キリスト教学園での講演録に、「ボランティアの思想というのは、おかしかったらおかしい、間違っていたら間違っていると言い、そしてそれを正そうとする具体的、自発的な行動です。だから言われなくてもする、言われてもしない、というような「自律」、自分で律するという思想を基盤にしているのです。」(p.24)と示しておられる部分には大きく頷くことができた。こうして3連休の中日、越年した原稿の仕上げには概ね目処が立ったが、この数日、根を詰めた作業をしていた際に乾燥でやられてしまったのか、特に今日の日中は咳が止まらない状況になってしまった。不摂生を恥じつつ、周りの方々に心配や迷惑をかけてしまうことを案じ、明日(1/9)の朝と夕方の予定は先方に了解をいただいて変更させていただくこととした。

お仲間の皆さんでまとめられた追悼のための一冊
<Nikon D3S, Micro DX Nikkor 40mm, f4.5, 1/80, ISO400>

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