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2014年4月19日土曜日

倫理をめぐるアポリア

久々の旅に出た。単に出張の届けを出していないというだけで、荷物もさして変わりがない。少しだけ違うのは、カメラの交換レンズがいつもより多めなことと、高校時代に来ていた学生服がカバンに詰められたことだ。ちなみに学生服の下は、齢を重ねたことで着用することが叶わなかった。

まず向かったのは東京、内幸町のプレスセンターの10階である。朝日新聞の論説委員を務めた大熊由紀子さんが主宰する「ことしもまた、新たなえにしを結ぶ会」の撮影ボランティアのためだ。由紀子さん(と呼んでください、と仰っていただいているので、そう綴らせていただく)とは、私が2002年に大阪大学大学院人間科学研究科で学び始めた折、新入生歓迎の合宿「チャンプール」にてお目にかかった。それ以来、毎春に東京に出向き、いのちにまつわる問題の最前線で活躍する皆さんが並ぶ舞台に寄せさせていただき、引き込まれる語りを受けとめながら、活き活きと語る姿を写真に収めさせていただいている。

内容については今後、「えにし」のウェブで紹介されるのだろうが、それに先だって印象に残った内容を綴っておこう。第一部は「障害者権利条約」の批准と「差別解消法」成立をテーマに、大阪ボランティア協会の早瀬昇さんをコーディネーターとして、石川准さん(内閣府障害者政策委員長)、蒲原基道さん(厚生労働省障害保健福祉部長)、平井伸治さん(鳥取県知事)によるシンポジウム、そしてさしずめ名刺交換大会「えにし結びタイム」を挟んで、介護の分野で幅広く活動する金谷勇歩さんをコーディネーターに、「medicolor(メディコロル)」というLGBTと医療に関する情報サイトを運営する看護学生の山下奈緒子さんと医学生のまおさん、少年院出院者らのピアサポート組織「セカンドチャンス!」代表である才門辰史さん、そして共に骨形成不全症である安積遊歩さん・宇宙さんの母子であった。第一部に直接関連することではないが、阪大に学んでいた当時、大学コンソーシアム京都で障害学生支援のプロジェクトを進めていたのだが、そのことを由紀子さんに伝えたところ「障害者」の対義語は「健常者」でよいのか、と問われたことを今でもよく憶えている。今日の第二部では、「手術は生命に関わるときだけに」と提案する安達さんと、「手術という手段が封じられると、自ら生命を落としかねない人もいる」と仰る山下さん、このやりとりは生命倫理を考えるアポリアと言えよう。

毎年、夜の部まで参加している「えにし」の会だが、今日は高校の同窓会が地元で開催されるため、昼の部までで失礼をさせていただいた。旧制中学の時代からの歴史ある学校ということもあって、同窓会には当番学年が定められ、文化の継承がなされるように工夫されている。私たち46回生は、今年の春の磐田支部総会では校歌斉唱を、来年の全体総会では運営全般を担うこととされている。ということで、今夜は学生服(の上だけ)を着て、久しぶりに会う仲間たちと共に壇上にて高らかに校歌を歌った。その後は今年の全体総会の運営を担う45回生の皆さんとの懇親会となったのだが、10代における1歳の違いは、かくも強固に絶対的な上下関係を生成・維持するのだな、といったことを感じる一夜であった。

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