朝からLearning LabによるPBLの連続セミナーのため、オールボー大学の図書館に向かった。オールボー図書館のセミナールームには偉人の名前などが用いられているのだが、今日の部屋はEINSTEINであった。今日のテーマは「Working with institutions and companies in project work – an introduction to the case study method in project supervision and lectures」、さしずめ「プロジェクト活動における大学と企業等との取り組み方:プロジェクトの統括と講義における事例研究方法の導入」とでも訳すことができそうだ。ただ、デンマークの教授法では対話が重視されるために、ただただ、話題提供者から何かを教わるという姿勢では臨むことができないのである。
今日のセミナーでは、参加の10日前(22日)までに、5分間のミニプレゼンテーションのテーマを指示されたウェブフォームからエントリーした上で参加しなければならなかった。事前のテーマ選択への案内があったのは5月17日で、10個の選択肢の中から先着順で選ぶことができるとされたが、1つのテーマあたり最大2名ということで、17日に届くや否や、急いで入力して返信したことを覚えている。私が選んだのは、「How can the relation between theory and empirical work be handled in case studies?」、少し意訳ともなるが「事例研究では理論と実践とをどのように関連づけていくか」である。立命館大学サービスラーニングセンターの授業で担当してきた科目では厳密にはPBLでもケーススタディでもない(カタカナ表現よりもcase studyとした方が厳密には正しい)ため、「ケーススタディについて考えるためのケーススタディとしてサービスラーニングにおける教育実践を取り上げる」という前置きをした上で、シチズンシップ・スタディーズIの「減災×学びプロジェクト」を事例に、ケネス・ガーゲンによる社会心理学の見地を元に、意味創出と意志決定が言わば動的平衡のようにもたらされると示すことにした。
ちなみに、今日のセミナーは、参加者が発表する10の観点こそがケーススタディでは重要、というのがオチであった。結果として17名の参加であったが、参加者のプレゼンテーションだけで終わるわけではなく、参加者どうしのコメント・質問に加えて、本日の担当である政策科学部のPeter Nielsen教授からのレクチャーも盛り込まれた。備忘録として10のポイントを確認しておくと、(1)When is case design relevant(適切な時期に事例が持つ構造との関連づけ)、(2)Theory and empirical work(理論と実践との相即)、(3)Case studies and evaluations(評価方法の決定)、(4)Choosing case study design(進行方法の選択)、(5)Selecting sources and methods(情報源と方法論の選出)、(6)Empirical selection and contacting(実働部隊との接触)、(7)Units of analysis and appointments(分析部隊の設定と取り決め)、(8)Planning and implementing data collection(データ収集計画と方法への留意)、(9)Quality measures to be used in case analysis(事例分析に伴う質的評価)、(10)Strategy for data analysis(データ分析のための戦略づくり)、この10点である。結論を急ぐなら、この10点をよく考えて行うべし、となるのだが、3時間のセミナーのあいだ、何度か議論が紛糾することがあった。
オールボー大学の教員ら17人が参加してのセミナーだったが、参加者の口からも「scienticfic philosophy」という言葉が出るくらい、それぞれの専門とする分野ごとの科学哲学の違いが随所に現れることとなった。「あなたの行っているのはリサーチプロジェクトであってケーススタディではない」と断言したのは経営学部の教員で「人と話したらケーススタディではない」という定義を持っていると、自身の立場を説明していた。もともと土木工学を専攻し、社会心理学を修めるに至った私は、こうした類の議論に、良くも悪くも慣れている。ミニプレゼンテーションが求められた今日のセミナーでは2週間以内にミニレポートを出すように求められたのだが、そこでは日本での経験も踏まえつつ、「文脈が重視され現実社会の重要性が重視される社会科学での事例研究と、内容や結果が重視され一つ一つの知見の組み合わせが重視される自然科学での事例研究の対比」と「情報源・方法論の多重化による信頼性の向上」と「個別性が高い事例を過度に一般化することの乱暴さ」について触れることにしよう。
今日のセミナーでは、参加の10日前(22日)までに、5分間のミニプレゼンテーションのテーマを指示されたウェブフォームからエントリーした上で参加しなければならなかった。事前のテーマ選択への案内があったのは5月17日で、10個の選択肢の中から先着順で選ぶことができるとされたが、1つのテーマあたり最大2名ということで、17日に届くや否や、急いで入力して返信したことを覚えている。私が選んだのは、「How can the relation between theory and empirical work be handled in case studies?」、少し意訳ともなるが「事例研究では理論と実践とをどのように関連づけていくか」である。立命館大学サービスラーニングセンターの授業で担当してきた科目では厳密にはPBLでもケーススタディでもない(カタカナ表現よりもcase studyとした方が厳密には正しい)ため、「ケーススタディについて考えるためのケーススタディとしてサービスラーニングにおける教育実践を取り上げる」という前置きをした上で、シチズンシップ・スタディーズIの「減災×学びプロジェクト」を事例に、ケネス・ガーゲンによる社会心理学の見地を元に、意味創出と意志決定が言わば動的平衡のようにもたらされると示すことにした。
ちなみに、今日のセミナーは、参加者が発表する10の観点こそがケーススタディでは重要、というのがオチであった。結果として17名の参加であったが、参加者のプレゼンテーションだけで終わるわけではなく、参加者どうしのコメント・質問に加えて、本日の担当である政策科学部のPeter Nielsen教授からのレクチャーも盛り込まれた。備忘録として10のポイントを確認しておくと、(1)When is case design relevant(適切な時期に事例が持つ構造との関連づけ)、(2)Theory and empirical work(理論と実践との相即)、(3)Case studies and evaluations(評価方法の決定)、(4)Choosing case study design(進行方法の選択)、(5)Selecting sources and methods(情報源と方法論の選出)、(6)Empirical selection and contacting(実働部隊との接触)、(7)Units of analysis and appointments(分析部隊の設定と取り決め)、(8)Planning and implementing data collection(データ収集計画と方法への留意)、(9)Quality measures to be used in case analysis(事例分析に伴う質的評価)、(10)Strategy for data analysis(データ分析のための戦略づくり)、この10点である。結論を急ぐなら、この10点をよく考えて行うべし、となるのだが、3時間のセミナーのあいだ、何度か議論が紛糾することがあった。
オールボー大学の教員ら17人が参加してのセミナーだったが、参加者の口からも「scienticfic philosophy」という言葉が出るくらい、それぞれの専門とする分野ごとの科学哲学の違いが随所に現れることとなった。「あなたの行っているのはリサーチプロジェクトであってケーススタディではない」と断言したのは経営学部の教員で「人と話したらケーススタディではない」という定義を持っていると、自身の立場を説明していた。もともと土木工学を専攻し、社会心理学を修めるに至った私は、こうした類の議論に、良くも悪くも慣れている。ミニプレゼンテーションが求められた今日のセミナーでは2週間以内にミニレポートを出すように求められたのだが、そこでは日本での経験も踏まえつつ、「文脈が重視され現実社会の重要性が重視される社会科学での事例研究と、内容や結果が重視され一つ一つの知見の組み合わせが重視される自然科学での事例研究の対比」と「情報源・方法論の多重化による信頼性の向上」と「個別性が高い事例を過度に一般化することの乱暴さ」について触れることにしよう。