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2017年7月12日水曜日

社会変革と心理学

昨日からアムステルダムで始まったヨーロッパ社会心理学会だが、今年のテーマは「Psychology addressing Society's greatest Challenges」で、意訳すれば「社会変革に挑戦する心理学」 である。実験を通して実証していくというスタイルが強い心理学界にあって、こうしたテーマが設定されることは珍しい。昨日はオープニングセレモニーが中心だったので、本格的なプログラムは今日からで、既にチェック済みのプログラムを尋ねていくことにした。ちなみに、プログラムはスマートフォンのアプリで提供されており、自らの関心に応じて「Personal Program」という時間割をつくることもできる。

午前中には2つのプログラムに参加した。1つめは「Competence as a Common Language for Professional Identity and International Recognition」で、北米・ヨーロッパ・中南米・アジア(ただし中国のみ)・アフリカ、それぞれの心理学教育における認証評価についての事例発表により、グローバル化の中にあって、それぞれの国・地域の基準で進むのかどうかの問題提起のセッションだった。今日はリレートークで、明日の同じ時間に同じ場所で同じメンバーによるディスカッションが行われるという。2つめはイタリアの研究者らによる「Community Psychology in a changing world」で、ISISの戦闘員に対する質問紙調査、イタリアの女性刑務所での受刑者へのインタビュー調査、SNS時代における地域政策の対立に関するコミュニティ心理学の可能性、これらをお題としたミニシンポジウムだった。

ランチ休憩の後、午後には3つのプログラムに参加した。まずは「Inclusive education in Europe: prevention and early intervention?」で、この7月に出版された『Inclusive Educational Practice in Europe: Psychological perspectives』の著者らにより、学ぶ側、教える側、制度側のそれぞれが、どうすれば包摂的な教育を実現することができるのか語り合うものだった。続いてはポルトガルのJosé Ornelas先生による「Community Psychology Innovating Social Policies: Researching To End Homelessness」と題したスピーチで、今回の大会テーマに沿って分析と実践の枠組みを示すものとなっていた。その後に参加した「Teaching ethics and reflective thinking」というセッションでは、その名のとおり、心理学における倫理教育について、英国・トルコ・ポルトガル・チェコの実践報告がなされた。

これらのセッションを回った後、立命館大学スポーツ健康科学部の山浦一保先生らのチームも発表されているポスターセッションの会場に向かった。そして在席時間を終えて片付けの後、東北大学の河野達仁先生の導きで、レンブラント広場やムント広場などに立ち寄りつつ、アルベルト・カイプ通りのトルコレストラン「Orontes」に向かった。こちらのお店は山浦先生がお知り合いの、オランダ在住歴の長い方に予約いただいてお邪魔した。その方もまたお店で合流し、二次会の場所「Wijnbar Paulus」にもお連れをいただき、痛風の発作明けでビールが飲めない身体ながらに、皆さんのご配慮などで楽しむことができた。


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