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2007年1月22日月曜日

子どもたちの命

 3日間かけて應典院にて行われた「チャリティー絨毯展」が終わった。正式名称は「アフガンこども教育・母親自立支援チャリティ絨毯展」である。主催は東京の「国際子ども教育基金」と全日本仏教青年会だ。クンデゥース産の最高級絨毯を中心に、イラン遊牧民カシュガイ族100人の子どもが織ったミニ絨毯が特別展示販売された。

 應典院では初となる催しであったが、大阪では大阪府仏教青年会の協力のもと、4回目の開催となるという。昨年は四天王寺で開催されたようだ。売上金はカブールのアフガン女性が運営しているNGO「CWEF(The Children & Women's Education Fund)」の活動の支援に充てられる、とある。今回はアフガニスタンの教師たちの活動範囲を広げるための足となる中古の自動車を購入するのが目標とされていた。

 應典院での開催の運びとなったゆえに、應典院ならではの特性が出ればいいな、と思っていたところに、私の知り合いから連絡が入った。その知り合いは、著書「がんばらない」などで知られる鎌田實さんが代表を務める「JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)」の佐藤真紀さんである。JIM-NETでは2006年よりバレンタインデー・ホワイトデーの時期に合わせたチョコレート募金、名付けて「限りなき義理の愛作戦」を行っており、ちょうど20日には京都に来ており、大阪にも寄れますよ、とのことでった。イラク開催の1週間ほど前であった。

 そこで、主催の皆様に連絡を取らせていただいたところ、21日に受付横でJIM-NETの佐藤さんらを中心にイラク支援チョコレートを販売するということに相成ったのである。販売されるチョコレートは一口500円の募金と扱われ、そのうちの400円が白血病の子どもの一日あたりの薬代として使われる。ちなみにチョコレートは六花亭のアーモンドヤッホーで、さらにイラクの子どもたちの絵に湯川れい子さんと酒井啓子さんと東ちづるさんがそれぞれ文章をつけるというコラボレーション商品だ。ホワイトデーバージョンも用意が進んでいるようで、身近なつながりが大きな支援へと連鎖していくことを、イベントの実施における人と人との縁結びをとおして実感した次第である。



JIM-NET http://www.jim-net.net




カラー版 子どもたちの命:チェルノブイリからイラクへ

IV 命を考える

小さな優しさの連鎖(抜粋)




鎌田 『雪とパイナップル』(集英社)という絵本を、ぼくは書きました。その本を出したのは、つぎのようなことがあったからです。ぼくたちチェルノブイリ連帯基金は信州大学医学部の応援をもらって、チェルノブイリで、一一人の難治性の白血病の子どもに骨髄移植をしました。そのうち一〇人の子どもは白血病を克服して治ったのですが、一人の子どもは死んでしまった。その亡くなったアンドレという子どものお母さんを訪ねていくと、アンドレのお母さんは、彼の写真をぼくに見せてくれながら、以下のような話をしてくれた。



 私たちは、いちばん大切なものを失った。だけど、忘れられない日本人の若い看護師さんがいる。息子は骨髄移植を受けたあと、敗血症という病気で熱にうなされて、ものがまったく食べられなくなった。そのときに、日本からきたその看護師さんがアンドレに「何が食べたい?」って聞いたのです。初めはアンドレは答えられなかった。日を変えて、また彼女がアンドレに「何なら食べる?」って聞いたところ、アンドレは「パイナップルが食べたい」って。

 国が貧しくて、北国ですから、パイナップルは輸入品。これまでに一度だけパイナップルのかけらを食べたことがある、そのことを思い出して彼はパイナップルと言った。それを聞いた日本の看護師さんは、ちょうど二月で雪の多いマイナス二〇度の町のなかの店を一軒一軒まわって、「パイナップルありませんか?」と探すのだけれど、ないのです。それが町中の噂になった。そしてパイナップルの缶詰を持っているあるベラルーシの人がその噂を聞きつけて、ああ、日本人はベラルーシの子どものためにそんなことまでしてくれるのかと感心して、このパイナップルをどうぞ使ってくださいと言って病院にもってきてくれた。うちの息子はパイナップルを食べることができて、その後、敗血症が治って退院できた。だけど、一〇ヵ月後、白血病が再発して亡くなった。

 私たちは、息子といういちばん大切なものを失ったが、うちの息子のために、雪のなかをパイナップルを探してくれた日本人のいたことを忘れない。




 ここには、すごく大切なことが二つある。一つは、大切な子どもを助けてあげることができなかったにもかかわらず、お母さんは感謝してくれているということ。成功したからとか、うまくいったからとか、何かしてもらったから感謝をするのではなくて、いちばん辛いときに、子どもの言葉を聞きとめてくれて、子どものために何かをしようとしてくれた人がいてくれたこと。お母さんは大切なものを失ったけれども、悲しみを少し、その若い看護師によって癒されている。人間の関係というのは、どうもそういうことが大事なんじゃないかと思う。

 もうひとつは優しさの連鎖ということで。九・一一のテロの後、世界は、にくしみとか恨みの連鎖が生じ、やられたらやり返すということで、結局、にくしみとか恨みは暴力につながっていきました。けれども、逆に、人間は小さな優しさとか小さな温かさを生み出すこともできて、その小さな温かさとか優しさが、さらに連鎖を生むのです。その連鎖が広がっていたときに、ぼくは平和を生みだしていくのではないかと思うのです。



鎌田・佐藤(2006) pp.57-59







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