ブログ内検索

2017年12月10日日曜日

お見送りと振り返り

7日からオールボーに来られていた同僚をオールボー空港で見送り、帰りには昨日オープンとなったBoxTown(ジャガイモによる蒸留酒「アクアビット」の工場跡)に立ち寄ってみた。出発はお昼の便ということで、朝はヤーン・ヴァルシナー先生のお宅にお邪魔される予定となっていた。私もまた、同席させていただいた。そこは研究者の家、という雰囲気に包まれていた。

ヤーン先生は、サトウタツヤ先生と共に、複線径路・等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach)を開発された。恐らく、TEAよりも、TEAにもとづいて作成されたTEM図の方が広く知られているだろう。理論的な観点および方法論については、いくつかの文献を参照されたい。極めて単純化するなら、研究者と研究対象となる人の協働により、ある人のLife(人生、生活、生命)における価値を定めて、その価値を追求していく過程を明らかにする方法論である。

昨日、オーフスにご一緒する列車の中でも、サトウ先生からTEAについての解説をいただけた。TEM図には、時間の流れ(Irreversible Time/非可逆的時間)に対して、Lifeの中で遭遇するある分岐点(Bifurcation Point:BFP)を起点とし、どんな可能性があったとしても実際に導かれていく到達点(Equifinality Point:EFP/等至点)までの径路を描くことから始まる。その際、ある起点から、何らかの到達点に辿りつくまでには、促進する要因(Social Guidance:SG/社会的ガイド)もあれば、疎外する要因(Social Direction:SD/社会的方向づけ)もある。こうして、一つの到達点にたどり着くまでには、すんなり行く場合、促進される場合、疎外される場合と3つの場合があることを「発生の三層モデル(TLMG)」と位置づけ、そうして複数の径路を辿りうる中で、ある状態に辿りついた方のプロセスを抽出していくことを「歴史的構造化サンプリング(Historically Structured Sampling:HSS)」と呼んでいる。

TEAはTEM図(の作成)とTLMG(への関心)とHSS(による分析)を含んだ研究方法である。そして、分析を重ねていくと、特に複数人を対象にしたTEM図を作成していくお、個々の人生の分岐点ではなく、誰もが通過せざるを得ない出来事(Obligatory Passage Point:OPP/必須通過点)が見つかる場合もある。サトウ先生によれば「OPPとはジブラルタル海峡をイメージすればよい」とのことで、船で地中海にアクセスする際には避けて通ることはできない(からOPPになり)、陸路や空路なら通らずに済む(からBFPになる)という具合である。と、TEM図とTEAについて綴りながら、4日間を通して触れたアカデミックな部分を振り返っている。



0 件のコメント:

コメントを投稿