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2013年2月16日土曜日

文字を書き、数字を読んで、図表にする。

国際ボランティア学会の第14回大会が、愛知淑徳大学の星ヶ丘キャンパスで開催された。ということで、立命館大学びわこ・くさつキャンパスで13回大会を引き受けさせていただいてから、1年が経ったことになる。実はこの4年にわたり、この学会の理事をさせていただいているのだが、学会誌『ボランティア学研究』の刊行も含めて、立て込んでの「作業」ばかりで、いい「仕事」ができたとは、胸を張って言えないのが心苦しい。それでも、今日は理事会での昨年度大会の実施報告と、ランチ・セッション「地域参加型学習のシステムとスタイル:各地の大学ボランティアセンターの実践から探る」のファシリテーターというお役をきちんと勤めるべく、朝から名古屋に出向いた。

昨年度の13回大会では東日本大震災から1年ということで「震災・ボランティア・コミュニティデザイン」という大きなテーマだったのに対し、今回は「なごや、大好き!だから、考えよう。」という、ローカルな切り口である。例年、2日間にかけて行われる年次大会も、今回は1日に集約され、ランチセッション以降の市民公開プログラムでは、第一部の公開シンポジウム「お金の地産地消から、地域の未来を描く」では、日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事の基調講演とあいちコミュニティ財団設立準備会の木村真樹さんの活動報告の後に河村たかし名古屋市長が登壇、第二部の緊急フォーラム「東海地震に負けない!みんながやるべきこととは」では、人と防災未来センターの阪本真由美主任研究員とピースウィンズ・ジャパンの大西健丞代表理事と原田英之・袋井市長と厚生労働省企画課の岩崎克則さんと共に大村秀章愛知県知事が、それぞれ登壇した。こうしたコーディネートにあたったのが、愛知淑徳大学のコミュニティ・コラボレーションセンター(CCC)の運営に携わり、今回、大会実行委員長を務めた(ちなみに、大阪大学大学院人間科学研究科ボランティア人間科学講座の同窓というよしみがある)小島祥美准教授である。

午前中は自分のセッションの会場づくり(5号館5階55C)を一人で行っていたため、分科会に参加できなかったのだが、李永淑さんと高橋真央さんとのセッションを終えた後、一参加者として会場の後方で伺っていたシンポジウムとフォーラムは、なかなか興味深かった。一部からは意外だ、と思われるだろうが、今回、初めてお目にかかった鵜尾さんの基調講演では、NPO高知市民会議と寺村葬儀社による「天国からの寄付ぎふと」(これには「極楽ではないのか…」と思わずつっこみを入れてしまいたくなる浄土宗僧侶の私である)、実行者を支援するクラウドファンディング「READYFOR」などの事例紹介をはじめ、震災後に起こったお金の流れについての説明や、ファンドレイジングとは共感と解決策であるという基本的な考え方の整理、そして寄付を通じた善いお金の循環のためには「期待と機会と信頼と達成感」が鍵である、など、短い時間で端的ながら濃縮されたお話を伺うことができた。そうした話題提供が後の深い議論に拍車をかけた。鵜尾さんの基調講演の後、木村さんの活動紹介に続いて、「何が言いたいかっていうと」が口癖の河村たかし市長が、「減税とは税金の民主主義」であり、「この4年間で330億円減らした」こと、その背景には「年貢を1円でも減らす」ことで「1対1のサービスがより安く提供されるようにすることが、市民に対する責務と考えているため」など、(あの)親しみやすい語り口で、しかしNPO議員連盟の経験や、地域の寄付を推進するために必要とODA廃止論の提示、さらにはマッチングファンド方式による補助金行政の刷新可能性など、具体的な発言を重ねた。 

このように、充実したフォーラムに参加して、それぞれの語り口と発表素材を目の当たりにし、改めて、コミュニティデザイン、あるいは地域づくりのためには、文字を書き、数字を読んで、図表にすることが大切だと感じた。ただ、残念だったのは、手話通訳と共に会場に用意されていた要約筆記について、「聞こえる」「読める」私からすると、要約の度合いと字の読みやすさ、さらには要約筆記者どうしのチームワークなどの面で、より高い水準を追求できそうだ、と、そこに気が向いてしまったことだ。常々、選択肢は多い方がよいと考えていることもあり、ないよりもあった方がいいのは当然なのだが、当然、その質は低いよりも高いほうがいい。とはいえ、今回の「学会」の年次大会は「学術会議」という枠や既成概念の呪縛を解き、地域と共にある仕事や暮らしのあり方を総合的に迫った企画運営として、折に触れ、想い起こすことにしよう。

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