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2013年2月8日金曜日

初めてながら懐かしい感覚

應典院のコモンズフェスタが終わり、立命館大学は講義から入試へとモードが変わるなか、オランダとベルギーに出張させていただくことなった。今回の出張は、京都大学の高田光雄先生を代表者とする共同研究のチームに入っていることによる。このプロジェクトは、いわゆる「科研費」と呼ばれる科学研究費補助金事業に採択されており、2013年度から4年にわたって各種の実践的研究を進めることになる。テーマは「地域のまちづくりと連携した市街地型公的住宅団地の再生に関する研究」であり、主たるフィールドは京都府の堀川団地だ。

一連の調査研究にあたって、私は「商業機能の検討」を分担して取り扱うこととなっている。商売は得意でない私も、「まちづくり」という大きなテーマに対する商業機能という点なら、これまでの経験や社会心理学の一分野である「グループ・ダイナミックス」の観点から接近が可能であろう、という見立てである。というのも、京都府住宅供給公社「堀川団地まちづくり懇談会」がとりまとめ、公開されている報告書にも記されているとおり、「昭和26年に竣工」(p.13)した堀川団地は、全国初の「ガス、下水道が完備した鉄筋コンクリート造の店舗付き住宅」(p.3)なのだ。そこで、単なる「古き良き」といった懐古主義や、「もったいない」といった温情主義に回収されることなく、負の歴史も含めつつ、今なお商いと住まいの場とされている方々をいかに大切にできるか、それが今回の共同研究で特筆すべき課題なのである。

今回の調査では、アムステルダムのベルマミーア団地及び団地の管理等を担う東南区役所でのヒアリングを主として、ブリュッセルの隣町にあるルシアン・クロール(LUCIEN KROLL)によるルーヴァン・カトリック大学の学生寮などを訪れることで、この大きなテーマを紐解く実践知を求めに来た。とりわけ「団地再生」は成功例が語られやすい。また、建築物という見えるものに手が入ることによって、変化の比較は文献資料でも可能である。しかし、成功したと呼ばれる事例ほど、その後には礼賛の嵐が訪れる傾向があろう。そうした私の関心は、1992年から行政によって大胆な団地再生等の事業がなされた開発に対して、2002年の段階で「失敗」の要素が明らかにされている中、さらにその10年後に「今」を追うことにある。

アムステルダムへはKLMオランダ航空により、関西空港から直行便が出ている。出発の直前に、メールでの伺いや催促の域を超え、電話での督促と最終通告をいただいた案件を2つ終えて乗った行きの飛行機では、まず、仕事に追われて後回しとなったメールの整理と返信の作業などに充てた。パソコンの電池の前に、自らの体力という電池が切れたため、気分転換にと、11時間あまりのフライトの途中で、『踊る大捜査線4』と『あなたへ』を観た。どれも、作品としては初めて観たのだが、前者はテレビシリーズを観ていた当時の自分を思って、そして後者は劇中で歌われる宮沢賢治作詞・作曲の『星めぐりの歌』が高度1万メートル上空を西へと向かう旅客情緒に染み渡り、印象深い作品となった。これからの1週間、ちょうど、東日本大震災で被害を受けた東北の地へ1200kmほどの旅路を2週にわたって重ねたということ、さらにはその過程で、1995年の阪神・淡路大震災以降の自分を振り返ったこと、それらも相まって、各所にて、初めてだけど懐かしい感覚を携えての調査の旅(『あなたへ』の台詞を借りるなら、これはやはり旅であって決して放浪ではない…)を送ることになりそうだ。

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