以前、大阪大学大学院人間科学研究科のボランティア人間科学講座の博士後期課程に社会人入学し、渥美公秀先生から指導をいただいていた折、『大阪ことば学』という本を紹介いただいた。紹介いただいた、というのは変な言い方だが、実は2週間に1回、書評交換会というものをメーリングリストを使って行っており、その中で渥美先生が評しておられたものの一つが、それであった。ちなみにこの書評交換会は「A Book A Week」の略称で「ABAW」と呼ばれており、本だけでなく、7つの日本語論文か、1つの英語論文と4つの日本語論文、あるいは2つの英語論文と2つの日本語論文か、3つの英語論文という、どれかで投稿しなければならないというルールがあった。
渥美先生はもとより、共に学ぶ仲間たちと共に、この書評交換会に参加するなかで、多くの本と論文に出会い、本と論文を読むということの意味、さらには本と論文を書くことの価値について触れたのだが、中でも『大阪ことば学』は、当時、京都から大阪へと頻繁に往復を重ねていた私にとって、大阪の文化を紐解く格好の素材となった。同書は1999年に大阪の出版社である創元社から刊行された後、2004年には講談社文庫で、さらに2010年には岩波現代文庫で、それぞれ再出版されている。内容については、ぜひ、本文を、少なくともリンクを辿っていただいて版元の紹介文を見ていただくことにして、ここでは「リズム」と「テンポ」こそが大阪ことばの鍵である、ということに、関心を向けていただくことにしよう。ここまで長くなったが、要するに、今日、かつて大阪で展開されていた「チカン・アカン」という列車内の痴漢犯罪防止キャンペーンのスローガン(ちなみに、Googleの画像検索で、多くの写真に触れることができる)を想い起こした、ということが言いたいのである。
実は、アムステルダムからの帰りの飛行機が乾燥していたためか、どうも喉から風邪を引いたようだ。で、「チカン・アカン」風に言うと「オカン・アカン」(ただし、大阪ことばで言う「お母さん」のことではなく、書き言葉で示すなら悪寒である)ということで、今日のお昼は師匠の渥美先生の大好物でもある天下一品で「こってり・ニンニク入・ネギ大」をいただくことにした。ちょうど朝から應典院の次年度以降の展開について、秋田光彦住職と打ち合わせだったので、應典院から程近い松屋町通店に出向いた。無論、それで治るとは言えないが、治さねば、という決意は固まった。
早めの昼をいただいて自宅に戻ってからは、休み休み、仕事をさせていただいた。本当は應典院での打ち合わせ内容(コンセプトメイキングのセンスに対するブランドマネジメントのスキルの向上で、プロジェクトの浸透力を高めなければならない、といった件)を住職に600字で送る、という宿題をいただいたのだが、その宿題が出たことだけをここに記して、もう少し、じっくり考させていただければ、と思う。根っからの大阪人で(も)ある秋田住職ゆえに、ただ、コントロールよく直球で返してもアカンのである。かといって、コントロールが悪ければ、最早、「人に充てる」ことが求められるキャッチボールではなく、「人に当てる」ことが求められるドッジボールになってしまうので、夜に見たETV特集「プレゼンが世界を変える」と題したTEDのドキュメンタリーのごとく、リチャード・ソウル・ワーマン(Richard Saul Warman)の言う「情報アーキテクト」の視点を研ぎ澄ませて、伝えることよりも伝わるよう、リズムとテンポをうまく見計らうことにしよう。
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