ブログ内検索

2017年4月21日金曜日

知識を使うことと行動を通して知ることのあいだ

デンマークには、学外研究という制度により、1年の滞在させていただいている。よって、研究することが第一義である。英語では「sabbatical year」などと呼ばれているものだ。サバティカルという言葉を調べてみると、聖書の「レビ記25:4」から「古代ユダヤ人が7年ごとに耕作をやめた年」という項目があった。英語のsabbath(the Sabbath)が安息日を示し、その語源を辿ると元々がヘブライ語、そこからギリシャ語を通し、ラテン語のsabbatumになったとされており、近代の営みから離れて安息の時を過ごすべし、といった意味も現代においてはありそうな気もしている。

ともあれ、研究休暇として位置づけたとしても、研究をする以上、身を置く場所と、研究を支える人が必要である。今回はオールボー大学のコミュニケーション・心理学部にて、お世話になっている。そして、幸運なことに、2名の先生が受け入れを担っていただいた。4月7日に最初のリサーチミーティングがなされ、今日は2回目のミーティングが行われた。

前回のミーティングにおいて、Mogens先生が「私の研究テーマを紹介するよ」と約束をいただいたので、楽しみにお邪魔した。まずは実践家と共に行う教育の「trappestigen(step lader/はしご、踏み台、脚立)」というモデルについて紹介いただいた。もともと、Jens Rasmussenによる『Information Processing and Human-Machine Interaction』で示されたモデルを、Mogens先生が博士論文執筆の際に再構築したそうで、問題探索、情報収集、シナリオづくり、到達点の再検討、活動の選択、実現可能性の検討、実際の活動を通した問題解決、という流れを取っている。このモデルを前提にし、グレゴリー・ベイトソンによる『Steps to an Ecology of Mind(邦訳は「精神の生態学」』で示された3つの学習段階に即して、学びの場に関しての意見交換を行うことになった。

今日のミーティングでは、来週に市役所のボランティア窓口へのアポイントも取っていただくなど新たな動きもあったのだが、最後に、スウェーデンの哲学者Bengt Molanderの著作『The Practice of Knowing and Knowing in Practices』(2015年)を貸していただいたことが、今後の研究に大きく影響をもたらしそうな気がしている。この著作では「与えられた知識を使うこと(knowledge)」と「行動を通して知ること(knowing)」の違いが示されており、この間、私が授業などで伝えてきた「名詞の動詞化」といった観点を深めることができそうだ。一方で、メタファーについても話題となったのだが、これはknowledgeが「辞書」、knowingが「クラフトワーク」に近い、というMogens先生の説明に触発されてのことである。一方で、米国の社会学者シェリー・アーンスタイン(Sherry Arnstein)の「市民参加のはしご(Ladder of Citizen Participation)」のモデルも含め、個人モデルに基づく機械メタファーは、学びの場における相互作用を低くする可能性もある、といった議論もでき、研究モードにどっぷり浸った一日となった。



0 件のコメント:

コメントを投稿