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2017年10月7日土曜日

研究のお作法を

英国・ヨークに留学している後輩がオールボーを訪ねてきた。英語で言えばfriendと括ることができるのだが、日本語で友達かと訊ねられると、なかなか難しい。一方で教え子かというと、直接の教え子でもない。ちなみにFacebookでは「尊敬するあの方に会いに」とあり、なるほど、そういう表現があるか、と妙に納得している。

そんな後輩が訪ねてきた理由は、海外での滞在による研究の支援を受ける中、修士論文が提出できた今、これからどのような道を歩んでいったらいいか、という相談であった。もっとも、論文提出を終えて、純粋な旅に出るという意図もあった。そこでまず、オールボーに着いてから、ヨークの街並みとは違うであろう雰囲気を楽しんでもらおうと、早周りでまちを案内した。その後、土曜日で人気のあまりないオールボー大学に向かい、普段は学生たちが使っているラーニングコモンズにて、研究と実践について意見交換をした。

早朝に英国を発ったものの、オールボーでは遅めのランチとることになったが、そこでは私の経歴が改めて問われることになった。土木から社会心理学、財団法人から宗教法人、そうして専門と職場の転換がなぜもたらされたのかについて関心が寄せられたためである。とっさに出て来たのは「港と船」のメタファーだった。高校時代までは「広い海原に出るには、あの港に行くのがいい」と、いわゆる地元の進学校に進んだものの、その後に待っていたのは、「どの航路でどの目的地に行くか」を選択しなければならなかった、という具合である。つまり、大学進学時にどの大学で何を学ぶかを選び抜くことは難しく、航海の船上での出会いを大切にする中で、乗客から船員に変わっていった、といった類の説明をした。

一方、オールボー大学での意見交換では、実践と研究のバランスをどう図るのかが問われた。かねてより使っている「旬の食材の出荷」という比喩を用いて、第一段階での出荷(書評、研究ノートなどによるリサーチクエスチョンの先鋭化)と第二段階での出荷(原著論文による結論の明確化と次のリサーチクエスチョンの提示)という具合に、公刊する成果物の種別の違いを説明した。そうして自らの研究への姿勢を逐次文字にしていくことが大切だと示した。それに対して、研究と実践を両輪として現場に関わる上では、何をしないか、自分以外の誰かが担うことができる余地がないか、そして倫理面への配慮のもとで、当事者による語りを当事者によって言語化されていく手がかりを見出すことができないか、など、自らの関心を投げかけてみた。そもそも、こうしたお作法や知恵は多くの方々との関わりの中で教わり、学んできたものであり、今は直接研究指導をする学生がいない中、ささやかに学界への貢献をする機会を得ることになった。


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