以前、日本で総合学習の時間が導入されるとき、その英語名に関心が向いた。結論から言えばIntegration Studyとされていたためだ。これでは「統合学習」である。実際、2011年2月に公開された英訳版の学習指導要領の仮訳版でも、小学校、中学校ともにIntegration Studyとある。
今日はオールボー大学で教職員向けの研修プログラムを担う「Learning Lab」による「Interdisciplinarity in PBL university educations(大学教育におけるPBLの学際性)」を受講した。担当は学習心理学が専門のOle Ravn先生と、建築土木が専門のKjeld Svidt先生だった。まずはオールボー大学で40年にわたって行われてきているPBLのモデルについて、デンマークにおける大学の歴史(象牙の塔の文化からの移行、フンボルト大学を源流とする教養教育の大切さ、ウィーン学団による論理実証主義・科学経験主義の主張)、理論的観点(クーンのパラダイム論、ヴィトエゲンシュタインの言語ゲーム、フロイトの精神分析、マルクスの科学的社会主義、リオタールのポストモダン、ギボンズのモード論など)からの整理がなされた。
PBLでは(1)自分のコンフォートゾーン(ぬるま湯、居心地のいい環境)から踏み出す、(2)知の融合を後押しする、(3)それらの実践において自分たちが置かれた状況にどんな変化がもたらされたか互いに振り返る、こうした3点によって知識の「オープンスペース」がもたらされることが大切だという。そして、そうした学びの場をつくるのがスーパーバイザーとしての教員の役割だとされた。その後、私を含めて7人の参加者が4人と3人のグループに分かれ、それぞれが授業の中でどのようにオープンスペースをもたらしているか、グループワークで話し合われることになった。私は「問題に関わる前に自分の認識の枠組みを当てはめないこと」によって「現実社会をより深く探究していくことができる」と示したところ、5月31日の研修でもご一緒した方が「(PBLにおける)teachingとはshowingだ」としてDavid Kolbの体験学習の循環過程のモデルを使ってご自身の取り組みを紹介された。
PBLを通じてもたらされるのは個別の学問分野の結び合わせと結び合わせ、それが今日のテーマの「Interdisciplinarity」である。Ole先生は接頭語(inter-、multi-、trans-)の違いに関心を向け、「結び合わせて相互作用をもたらす」のがインター(ここでは学際)、 「結び合わせずに相互作用をもたらそうとする」のがマルチ(統合)、「新たな世界を生み出そうと知恵を出し合う」のがトランス(学融)、と整理された。その上で建築土木での事例をもとに、それぞれの専門(サトウタツヤ先生の言い方にならえば学範)を越えた協働によりプロジェクトを展開するには、自分たちに何が求められれているのかを明確にしていくことが学びになるとされた。ただし、最後のディスカッションでは、例の方が「新規のプロジェクトを組み上げるよりも、実社会で見られる既存の問題を扱う方が現実を直視し、学びが深いのではないか?」と質問され、改めて学生でもできること、学生だからできること、そこに根ざす新規性や独創性に対する外部からの期待と、連帯感の中でも未熟さによる水準の低さ、それらが構造的な問題とされることを実感した。
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