バルセロナから帰国する日となった。5月23日に、コペンハーゲン郊外のアマーネイチャーセンターで合流して、ベルリンにもご一緒した当別エコロジカルコミュニティーの山本風音くんともお別れである。山本くんはまだバルセロナにとどまり、いくつかの場所を回ってから変えるという。最後の朝ということもあり、予約時につけていた朝食を一緒に取り、ささやかに旅の行程を振り返った。
話の中に比喩が多く含まれることを多いに自覚しており、何より自ら積極的に用いているのだが、今日の会話ではサッカーの比喩を用いた。しかも、会話そのものへの比喩として、である。私は相手に向かってパスを出しているつもりが、時折、それがシュートだと思われて、必死に向き合ってキャッチされる場合、ともかく反応だけはなされる場合、ともかく守らねばとパンチングするかのように弾かれる場合がある、そんな話である。こうしたレトリックは、学生時代、立命館大学産業社会学部の中村正先生が用いた「キャッチボール」型(受けとめることが大事であり、受けとめられるように投げかけるのが大切)と「ドッジボール」型(ぶつけることが大事であり、時には受けとめられないときには逃げることが大切)という対比などから着想を得ている。また、「もち型社会」(一つひとつの要素が全体の中におしつぶされている状態)と「おにぎり型社会」(一つひとつの要素はバラバラだが水分や具や海苔になどによって一つの形をなしている状態)という対比に感じ入ったこともよく覚えており、集団の力学を語る上で今でも使う比喩のセットの一つである。
落ち着いた朝食の会場では、サッカーで言えばセットプレイが多いこと、目の前のバナナ1本でもここまで会話は広げられる、といったオッサントークをして、空港へと向かった。行きと同じく、いわゆるLCCのフライトである。今、住んでいるオールボーからバルセロナまで、約3時間の旅なのだが、何と、オールボーからコペンハーゲンへの40分ほどのフライトよりも、安価で移動することができるのだ。ただ、その代わりとして、かなり狭いシートピッチで満席に近い予約でのフライトとなるため、機内はかなり混雑した状態で飛ぶことになる。
後ろの席の方が頻繁に咳をされていたのが気になったのだが、予定時刻よりも30分ほど早くオールボー空港には到着した。そこで待ち構えていたのは、ランダムチェックをする移民局の警察官であった。デンマークもスペインも、ビザ無し渡航ができるシェンゲン協定内の国だが、最近はドイツから協定国内に不法滞在するケースを警戒してか、パスポートの提示を求められた。幸い、私たちには滞在許可が出ている上、シェンゲン協定圏内に入って3ヶ月未満であるため、特に問題はないのだが、今後もこうしたケースが増える可能性を思うと、滞在許可証を常時携帯しておかねば、と決意を固めた。そんなこともあって、ほとほと疲れてしまった夜の食事は、私が当番となり、妻の手解きのもと、チキン&シーフードグラタンを作ることにした。
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