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2017年6月13日火曜日

クラウド時代の宿命

 受動態と能動態、自動詞と他動詞、そうした言葉の使い分けにこだわるようになったのは、阪神・淡路大震災でのボランティア活動の後、大学とまちを頻繁に往復するようになってからのことだろう。ある日を境にいきなり変わるような事柄でもないので、徐々に、そうなっていったと思われるが、説くに2回生の夏を前に高速道路での警備のバイトをして、エイヤと購入した中古のMacintosh PowerBook 180cを使いこなそうと遮二無二なり、Aldus PageMaker 5.0で多くの書類を作るようになったことが大きい。例えば、ただ伝えるのではなく、きちんと伝わるように、この表現一つ取っても、主語が人から物へと変わっているし、表現というのは自ずとできるのではなく丁寧につくる必要がある、そんな風に記すなら、前者が自動詞で後者が他動詞である。PageMakerでは緻密なレイアウトができるゆえに、それっぽい装飾を重ねてデザイン面でごまかさず、素材としての言葉がうまく活かされるように努めたことで、言葉へのセンスが磨かれたと捉えている。

 もっとも、文字は紙とペンがあれば、もっと言えば、土の上に棒や手や足でも表現できるのだが、最近は多くの書類がコンピュータでつくられている。デンマークに来て思うのは、日本での事務仕事においては作成の電子が進んだだけで、処理と管理の電子化と切り離されているということである。Excel方眼紙の話題をバカバカしく思いながらも、それに慣れてしまってきており、何よりもともと、電子化というのは省力化のためにあったのではないかと問い直している。例えば出張書類をMicrosoft Wordの雛形で作成すれば、確かに見栄えは整うものの、罫線のズレや枠内に収まるようにフォントサイズなどを整えるまでにそれなりの時間を使っていることを思えば、丁寧かつ注意深く手書きをすればいいのではないか、と。

 そうしてコンピュータを日々活用してきているが、また、やらかしてしまった。愛用のMacBook Proのキーボードが壊れてしまったのだ。正確に言えば壊してしまったのであるが、シフトキーが常時押されている状態になってしまったのである。そのため、常に大文字での入力(Capslockを入れれば逆に小文字になるかと思いきや、シフトキーが押されている状態を反転させる力はないことが判明)となり、一度ログアウトをしてしまうと、自動的にセーフブートがかかってしまうため、メインパソコンで何の作業も仕事もできなくなってしまい、昼過ぎに今の住まいに2台の救急車がやってきている風景が、何かの暗示のようにも感じてしまうのであった。

 悪いことは重なるもので、先日、Appleからメールでリマインダーが届き、2017年6月15日以降、Apple社以外の製品・商品からのiCloudサービスにアクセスする際には2ファクタ認証によるAppパスワードの利用が必須と案内されている。これによって今すぐ何かに困ることはないと思われるものの、古いOSを併用・活用している身としては、例えば昔のワープロ専用機のように、スタンドアローンで使う時代も想定しなければならなくなってきた気がしてならない。加えて、無制限のストレージを謳ってきたAmazon Driveも、米国版では次の更新から1TBの制限がかかり、1TBごとに同額の請求(59.99米ドル)がかかるという。最早、我々はシステムの上で動いているのではなく、システムに絡み取られながらもがいているのではないか、そんなことを感じながら、MacBook AirのOSをEl Capitan(Mac OS X 10.11、2015年発表)にアップデートし、Evernoteのプレミアム会員に契約(ちょっとお得なソースネクストの商品でコードを購入)するなど、来るべきときに備えるべく、パソコンの環境整備に充てた一日となった。


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