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2017年6月28日水曜日

電子化の波の中で

 デンマークに来てから、あまり現金を使っていない。もちろん、当初は使わざるを得ない場面もあった。しかし、まずバスのICカードをつくり、クレジットカードでチャージできるようになってから、格段に現金を必要としなくなった。また、銀行の口座が開設できるまで、それなりの時間がかかったため、最初の家賃はクレジットカードのキャッシングを使って現金を調達し、その上で銀行の窓口にて振込をしていた。

 デンマークは、滞在許可の申請が完了した段階で市民個人登録番号(CPR No.)が割り当てられ、それがほぼ全ての手続きにおいて必要になる。まず、住民登録をすると、CPR-No.が入った保険証が発行される。その後は、2010年に導入されたNem IDという、デンマーク国内におけるほぼ全ての電子手続きにおける個人認証のためのIDを発行してもらうことになる。Nem IDは住民登録をした際に、そのまま窓口で発行を依頼することもできるし、銀行に口座開設を依頼しに行けば、自動的にNem IDの発行も依頼することになる、という制度となっている。

 日本のマイナンバーとの大きな違いは、政府の都合でルールが決められているわけではない、ということである。結果として、個人の情報は全て政府側が握ることともなる。実際、銀行口座の開設後には、すぐにDR(日本でいうNHKと捉えていただいてよいが、 その性格は若干異なるものの、今回は立ち入らない)からメディア税徴収の封書が届いた。このように、一元管理されていることを、ことさらに監視社会だと捉えるのは、政府への信頼・信託がない証なのだろうし、Nem IDがあれば公共機関からのメール(Digital Post)や銀行を含む企業等からのメール(Eboks)が、通常の電子メールとあわせて管理できるWebサービスと紐付けされていることなどは、日本のマイナンバーとは比べものにならない制度だと感心する。

 こうしてデジタル化が進んでいるデンマークだが、今の住まいでの洗濯だけは、コインに頼らなければならない。1回15クローナが必要で、おつりが出てこないという機械なのである。以前、大阪の浄土宗應典院に籍を置いていた際、築港ARCプロジェクトのチーフディレクターをしていたアサダワタルくんと、現在は大阪府立大学に所属しつつバルセロナで学外研究中の花村周寛先生の企画により、阿倍野などで「エクソダス」という行動展示プログラムを行ったが、その際、一部の自転車置場が「100円玉1枚と50円玉1枚の、合計150円を入れて利用する」ものとなっていて、驚いたことをよく覚えている。あれから7年あまり、合理的な値段設定がなされた結果、利用者に悩みをもたらす場合もあるのだろうと、15クローナを必要とするものの大阪と同じく両替機は置かれていない洗濯機の前で思うのであった。


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