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2017年6月17日土曜日

伝統のぶんだけ今を磨く

 飛行機をバス感覚で手配して移動できるヨーロッパにいることを幸いに、スコットランドのインヴァネス(Inverness)にやってきた。ネッシーの物語(≠存在)で有名なネス湖(Loch Nis)のほとりにあるまちで、スコットランドの公用語であるゲール語「Inbhir Nis」から紐解くなら、ネス湖(Nis)の河口(Inbhir)を由来としていることがわかる。いくらバス感覚と言っても、今の住まいを置いているデンマークのオールボーからは、最低でも1回は乗り継ぐ必要があり、今回はアムステルダムでの乗り換えを選ぶことにした。ちなみにフライトを予約したのは先週で、ちょうど英国に滞在中である大学時代に知り合った友人の誘いに乗ることにしたためである。

 インヴァネスへの旅の目的は、ずばり、スコッチウィスキーの蒸留所巡りであった。おそらく最初に「スコッチ」という言葉を覚えたのは、テレビドラマ「太陽にほえろ」で沖雅也さんが演じた役への愛称だった気がする。お酒を飲むようになると、ジェームス・ディーンをはじめとして米国文化への関心の高さからバーボンを飲むことが多かったが、働き始めてから大人買いで揃えた漫画「美味しんぼ」の70巻に収められた「スコッチウィスキーの真価」を読んでから、お酒もまた、多くの職人たちによって生み出される作品であるとして、きちんと味わうことができるようになろうと、手を出し始めた。インスタントコーヒーのCMで使われた「違いのわかる男」ではないが、それぞれの味わいがなぜ、どうして違うのか、わかりたいと思うようになって早幾年、まだまだ及ばないのは質より量を求めてしまうときがあるからかもしれない。

 ともあれ、今回、友人の手ほどきで伺った蒸留所は、グレンフィディック(Glenfiddich)とグレングラント(Glen Grant)、2箇所である。朝にインヴァネス駅でエルギン(Elgin)までのオフピーク(土曜日ゆえに全日オフピーク適用)の往復チケットを求め、エルギン到着後は市内中心部を散策しつつショッピングセンター横のバスターミナルから36番のバスでダフタウン(Dufftown)へと向かった。この36番のバスは、A941でグレングラント蒸留所のあるローゼス(Rothes)を通り、クレイゲラヒ(Craigellachie)を抜け、アベラワー(Abelour)で向きを変え、そしてダフタウンへと向かう、蒸留所巡りのためにあるようなバスであり、マレイ(Moray)地区の一日乗車券(9.30ポンド)も利用できる路線である。車窓からは牛や羊が思い思いにそれぞれのいのちを生きている様子に目を向け、その山々のあいだを流れるスペイ川(River Spey)の流れに、スペイサイド一帯でウィスキーづくりが勤しまれてきた文化に思いを馳せた。

 今回は2つだけの訪問となったが、それぞれ、(1)会社の歴史、(2)原料である大麦麦芽、(3)糖化の過程、(4)大樽での発酵の様子、(5)蒸留器、(6)樽で熟成中の倉庫、それらの見学の後、試飲という流れだった。グレンフィディック(見学冒頭の10分ほどの映像では日本語の音声チャンネルもあり)では12年、15年、18年、そして20年(Project XX)を、グレングラントでは定番(ザ・メジャー・リザーブ)と10年ものを、それぞれテイスティングさせていただいた。ちなみに昼食は日本人の方がオーナーとして継承したクライゲラヒにあるハイランダーイン(Highlander Inn)で、早めの夕食はマッサンこと竹鶴政孝さんゆかりというエルギン駅前のライッチモレー・ホテル(Laichmoray Hotel)でいただいた。蒸留所はもとより、ダフタウンのバス停近くのウィスキー博物館やウイスキーショップに加え、折々の場所で適切な解説を重ねてもらった友人への感謝を込め、再来の約束と、それまでにスコッチへの研鑽を重ねることを誓う一日となった。


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